第1回:プロローグ 第一楽章:
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電話で話すのもいいけれど、手紙は残るから好きだ。手紙に込められた愛情が僕は大好きだ。時間を割いて手紙を書いた2人の間に通う、ぬくもりのあるコミュニケーション。バンドの仲間が並ぶ処でのやりとりを思い出す。まだ若いジャズミュージシャンに語りかける方法として、これ以上のものなんてあるだろうか?演奏録音のように、紙の上に保存されている、人々の言葉こそ、最高さ。今でも全て思いおこす。最高のミュージシャン達からの教えを。アート・ブレイキー、ディジー、、スイーツ、ジョン・ルイス、ジェリー・マリガン、サラ・ボーン、ダニー・バーカー。今でも耳に残っている。今は亡き多くの偉大な人達との、僕を育ててくれた素晴らしい言葉のやり取りを。サー・ローランド・ハンナ、マイルス、レイ・ブラウン、もう数えきれないくらいだ。僕は彼らから、沢山話を聞いて、そして素晴らしい教えを直接受けてきている。かけがえのない教訓だ。数々の深みのある言葉だ。でもいくつかは、時が経ち、記憶力の悪さで、薄らいでしまっている。彼らから手紙でももらっておくべきだったよ。
(語句・文法:数字は行数)
2.the warm communication that flows between two people who take the time to write
時間をかけて手紙を書く2人の間に流れる温かいやり取り:関係詞(communication that flows / people who take) 不定詞(time to write) 4.What better wayto talk to a young musician?若いミュージシャンに話しかけるための方法として何がこれより更に良いだろうか:反語(What better?) 不定詞(way to talk) 5.Words frozen on the paper紙の上に氷漬けにされた言葉達:過去分詞(Words frozen)
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アメリカ国内、そして世界中を旅していると、色々な人々に会う。中には、自分たちの個人的なことを話し、僕の経歴や経験について話を返したりするのが、大好きな人々がいる。僕は前から、ずっとやりたいと思っていたことがある。それは僕のこれまでの経験の中から考えたことと、それを聞いた人々の反応に触発されて思ったことを、本のような形にまとめてみて、若手のミュージシャン達の悩みに答えられるようにしてみよう、というものだ。世界中のどこの若手ミュージシャン達も、決まって知りたがるのは、意味とか意義といった内容だ。君はそうは思わないかもしれない。この子達は、大抵技術的なことを質問するのでは?と。でもそういう情報はそこいら中に溢れている。彼らは僕から、意味とか意義を聞き出したいようだ。「知り合いのミュージシャンは誰か」「彼らはどんなことを言ったか」「アート・ブレイキーとの共演はどうだったか」「自分らしくやっていきたいが大丈夫か」わかるだろう?こういうことを若手ミュージシャン達は知りたいんだ。自分らしくやっていって大丈夫か?ミュージシャンとしても、人としても。
(語句・文法:数字は行数)
2.groups of people who love to talk about issues個人的な話題について話すことが大好きな人々の様々なグループ:関係詞(people who love) 不定詞(love to talk) 3.I've long wanted to set some of those ideas, and the thoughts inspired by those responses, in the kind of book that can answer私はこういった思いや、これらの反応によって触発された考えを、~に答えることができる本の形にまとめたいと、ずっと思っていた:現在完了(I've wanted) 過去分詞(thoughts inspired by) 関係詞(book that can answer) 6.Whatever parts of the globe they maycome from彼らが地球のどの地域からの出身であろうと:関係詞(whatever) 12.that's the main thing younger people want to knowそれが年若の人達が知りたい主なことだ:関係詞(thing [that] people want) 13.is it okay to be themselves自分らしくいて大丈夫か:仮主語(is it) 不定詞(to be themselves)
僕が人に教える時は、幾つか答えを与えてあげている。「勿論、君の好きなようにやって大丈夫。そしてそれだけでなくて、今の君は、ポテンシャルも含めて、君自身で築き上げた最高傑作なんだから。」同時に僕なりのジャズに対する感性も伝えようとする。僕なりに理解している、ジャズの目的や意味をね。他のプレーヤー達と演奏する、単に人々と話をする、そうした中で、一人一人が、人生に対し異なる目的を持っていることに気付くだろう。人それぞれ考え、信じ、感じる特有の思い、というやつだ。
(語句・文法:数字は行数)
16.not only is it all right to be you, you are your greatest creation自分らしくいても大丈夫なだけではない、君は君が作り出したものの中で最高の傑作なのだ:AだけでなくBも(not only is it [but] you are) 仮主語(is it) 不定詞(to be you) 20.Specific ideas that he or she thinksその人が考える特別な思い:関係詞(ideas that he or she thinks)
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芸術をより深く追及してゆくと、自分自身のことや生き方が次々と見えてくるのは、このためだ。芸術は精神世界を語る。そしてジャズは、アメリカの精神世界を語る。ジャズは、僕達の祖国アメリカの魂が持つ真実の一面に語りかけてくる。そしてジャズは、人間としての君達の魂の本当の姿に語りかけてくるだろう。ジャズの中にある教えといったものをよく見てみれば、行き着くところ、音楽の目指すものが自分の目指すもののように見えてくる。その時君は、音楽で目指すものと国家が目指すものが一致していることに気付くはず。インプロバイズする、ということは、自分を取り巻く環境を良くしてゆこうと、自分の持てる力を知的に使ってゆく方法を作り出す、ということ。スウィングする、ということは、心の平静さをエレガントなやり方で保ち、そして快活な心持でいる、ということ。そしてブルースを演奏する、ということは、どんな悲惨な状況であっても、気品を持ってこれを乗り越える力をつけるということ。ブルースは、人の意志の大切さを物語る。「今はだめでも、必ず立ち直るぞ。」これはダメ「今はダメだ。このままで仕方ない。」そんなことをしてしまったら、ブルースとは言わない。「ブルーな痣」でしかない。「立ち直るぞ」があるからこその「ブルース」だ。
では後ほどまた。
(語句・文法事項:数字は行数)
1.That's why the deeper you go into an art, the more you learn about yourself and about living.それが、芸術により深く入り込んでゆくほど、君が君自身や人生についてより多く学ぶ理由だ:関係詞(that's why) the 比較級、the 比較級(the deeper, the more) 9.To improvise means to invent your own way of intelligently using what you have in order to improve your environmentインプロバイズする、ということは、自分の置かれている環境を改善するために自分の持っているものを知的に使う自分独自の方法を作り出す、ということを意味する:不定詞(To improvise means to invent) 動名詞(using) 関係詞(what you have) 不定詞(in order to improve) 11.to swing means to maintain equilibrium with elegance, to be resilienctスウィングする、ということは、優雅さを以て心の平静を保ち、快活であり続ける、ということを意味する:不定詞(to swing means to maintain, to be resilient) 12.to play the blues means that no matter how tragic a situation may be, you have the capacity to conquer it with styleブルースを演奏するということは、たとえどんなに状況が悲惨であったとしても、君は気品を以てそれを克服する能力を持っている、ということを意味する:不定詞(to play the blues means) 関係詞(no matter how) 不定詞(the capacity to conquer) 16.I might as well stay down心を落ち込ませる方がマシだ:~する方がマシだ(might as well) 16.If it did that, it wouldn't be “the blues.” もしそれ(ブルース)がそうするというなら、それは「ブルース」とは言わない:仮定法過去(If it did, it wouldn't be) 17.The “get up” part is what makes it “the blues.”「立ち上がる」の部分が、それを「ブルース」にするのである:関係詞(what) OをCにする(make it “the blues”
(解説)
improviseインプロバイズする(アドリブ) improvisationインプロバイゼーション
次回、第3回は、1.The Humble Self(謙虚であること)2003年6月4日の、前半部分を見てゆきます。