【英日対訳】ミュージシャン達の言葉what's in their mind

ミュージシャン達の言葉、書いたものを英日対訳で読んでゆきます。

「To a Young Jazz Musician」を読む  第10回

「To a Young Jazz Musician」を読む 

10回:門番は誰が 2003年8月14日  

 

今回は、全て見てゆきます。 

 

(67ページ) 

 

親愛なるアンソニー 

元気にしているかい?君が最近くれた手紙にはビックリしたよ。君が心底怒っているように思えたから、二度読み返さなきゃと思ったところだ。それもこれも、手紙に添えてあった、あの記事のせいなんだね?僕もあの記事は読んだ。大して動揺なんかしないけれど、僕もこういうのには慣れてしまったのかな。こんなのでガタガタ騒ぐなよ。僕が何とも思っていないのだから、君がイラつくことはないだろう。実際、僕なんか気分良くしているよ。だってそれは僕に対する敬意の表れだからね。と言っても、僕の音楽に対する敬意じゃない、ハッキリ言って。こういう連中の大半が、実際に僕の演奏を聞いたことがあるかと言えば、そんなことは無いんじゃないかと思うよ。今の時代の文化の中で、僕がどういう状況なのかへの、敬意の表れなんだろうね。ここ数年に亘り、僕の実際の演奏に対しては、批判なんか滅多にない。単にジャズについてどう思うかという意見だけだ。何にしたって、批判など全然うけず、もてはやされてばかりいる、なんて言ったら、君ならどう思う?退屈この上ないだろう。世間の向かい風にスリルを感じたかったら、厳しい批判に慣れておかないとね。皆くぐってきている試練だよ。ただし、問題は何をやり玉に挙げられているかだけれどね。 

 

(語句と文法:数字は行数) 

4.Didn't stir me much, but I guess I've become used to itそれはさほど私を動揺させなかったが私はそれに慣れてしまっていると思う:現在完了(I've become) 5.Don't let criticism you read or hear of me shake you none君が読んだり聞いたりする批判に君をこれっぽちも動揺させるな:使役動詞/関係詞・省略(let criticism [that] you read shake) 8.Not respect for my music - frankly, I don't think most of these fellas have really heard my playing - but a sign of respect for who I am in the culture私の音楽に対する敬意ではなく、率直に言って私はこれらの連中は私の演奏を実際には聞いたことがないと思っている、この文化の中で私が何者なのかに対する敬意の印だ:Not A but B (Not respect but a sign of respect) 動名詞(playing) 関係詞(who) 11.Over the years the criticism has seldom attacked my actual music, just someone's notion of what I represent数年に亘って批評は滅多に私の実際の演奏を攻撃してきていない、単に私の示すことについての誰かの見解だ:現在完了(has attacked) 関係詞(what)  

(68ページ) 

 

批評家が僕をやっつける時、「門番」という言葉で揺さぶってくる。まるで僕が、ジャズという神殿の入り口に立ちはだかっているかのようにね。実際は、批評の内容は、それとは 関係が無かったりする。ほら、頭の良い人達にとっては、話のお題目というのは、内容をストレートに表現しないよう、工夫したものにしなくてはいけないみたいなんだ。そしてお題目に書かれていることは、話の本筋では全然なかったりする。「アファーマティブアクション」と言うと、人は敏感に反応するよね。でもそれは、話の本筋ではない。本筋はそもそも、昔の奴隷制に端を発している。就職活動や学校教育、差別を受けたことへの補償、尊厳を否定されてきた因習のことが、そもそも本筋だ。なのに「アファーマティブアクション」と言う言葉が独り歩きしている。ある時は、就活や入試なんかの人数枠の話になってしまうことがある。でもそれだって、話の本筋ではないんだ。本筋は、これまで交流を持つことがいけない、とされてきた人々と、プロアクティブな(物事の先を良く見据えたうえでの積極性)関係を持ってゆこう、ということなんだ。でもそこを論じる人なんて殆どいない。むしろ、人数枠のことだの、バッキ判決のことだのを論じようとする。アンソニー、言葉と言うものは、独り歩きを始めてしまうと、本来の意図からかけはなられる羽目に陥る。一番肝心なことは、同じアメリカ人でも仕事がある人々とない人々がいる、ということだろう。面倒な問題は、みんなで考えていくようにしないといけない。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

7.When critics get on me, you'll hear them toss the word “gatekeeper” about, as though I stand barring entrance to the hallowed pantheon of jazz批評家達が私を批判する時、君は「門番」と言う言葉を彼らが急にさしはさんで揺さぶってくるのを耳にするだろう、それはまるで私がジャズと言う神聖な神殿の入り口に立ちふさがっているかのように:知覚動詞+O+原型不定詞(hear them toss) 仮定法・反実仮想(as though) 11.And the thing the agenda gets couched in is seldom the issueそしてお題目が表現されることはめったに重要であることは無い:関係詞・省略(the thing [that] the agenda) 過去分詞(get couched in) 16.It means a proactive relationship with people who have been denied accessそれは接触を禁止されてきている人々とのプロアクティブな関係を意味している:関係詞/現在完了(who have been) 19.Anthony, words take on lives of their own and end up having little to do with what they actually representアンソニー、言葉は独り歩きしていて結局それらが実際に示すこととはほとんど関係がなくなる:動名詞(having) 関係詞(what) 

 

ジャズに批評家連中に、門番なんて言われてやっつけられると、いつもこう言いたくなる「門番て、何の?」とね。すると彼らは僕のことを、ジャズの体制そのものだ、という。たった一人の人間、たった一つの小さな組織のことを「体制」だってさ!「体制」には何千もの関連業務や業界誌があり、大事な談話が発せられたり、歴史や伝統だってそこにはあるものだよね。みんなひっくるめてジャズというものだろう。そんなのを僕一人に丸投げなっか、誰もしていないだろう。そうだな、おそらく、ゲスな批評家ってさ、自分から見て、中あるいは中の上の組織に対しては、攻撃的になるのだろう。結局傷つくのは彼自身なのに。一人の黒人が率いる、ありもしない「体制」なんていうものよりも、攻撃の対象にした方がマシなものがあるだろう。考え方が安っぽい。人件費を安く済ませようとして黒人女性を雇おうとするみたいなやり方だよ。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

[p.69,1]How can one man or one small organization be the establishment, with thousands of jobs, magazines, critical discourse, history, and tradition?どうやったら一人の人間や一つの小さな組織が数千もの業務や雑誌や重大な談話や歴史や伝統を持つ機構になり得るのか?:反語(How can be?) 3.Have they all given up being the establishment to let me run things?彼らは全員組織であることを諦めて私に物事を運営させようというのか?現在完了(Have they given) 動名詞(being) 不定詞/使役動詞+O+原型不定詞(to let me run)  

 

(69ページ) 

 

こういうやり方は、ヘッドフェイクでもある。「体制」とは、頭のおかしな連中を指す。本当の処、人種、ジャズ、そしてアメリカの国内問題が話題に上がる良くあるパターンの会話の中には、その概念全体があるわけではなくて、門番をしているのは本当はだれなのか、という問いへの答えの中に在る。ミュージシャン達か?それともミュージシャン達にあれを演奏しろ、これを語れと命令することを長年の仕事にしてきた連中や組織か?言葉のヘッドフェイクの良い例を教えよう。ニューオーリンズのミュージシャン達は、自由を謳歌する音楽形式を発明し、彼らはそれを「ラグタイム」あるいは「ジャズ」と呼び、場合によっては「ディキシーランド」などと名前を変えたりする。ディキシーなんて言葉は、南部出身の黒人ミュージシャンにとっては、南北戦争の時に自由と相反するものとされたものじゃないか。でもね、ほら、それを自分達の発明した音楽の名前にしてしまっている(そして誰も疑問に思わない)。ある人が、何かの取材インタビューで「僕はディキシーランドなんて演奏しないし、ディキシー(自由を敵だとした、かつての南部)なんて嫌だ」なんて発言したとしたら、こいつは体制そのものだ、とか、面倒臭いヤツだ、となるわけだ。わかるよね?何のことか(訳注:ウィントン自身のことです)。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

10.In truth, the entire notion belongs in the strange dialogue of race, jazz, and America; it belongs in the answer to who really keeps the gate真実は全体の意図は人種とジャズとアメリカについての未知の会話の中に在りそれはだれが実際門番をしているかの答えの中に在る:前置詞+関係詞(to who) 13.Or do people and institutions who've made it their business over the decades to tell cats what they should play and sayそれともミュージシャン達に何を演奏するか何を語るかを指示することを何十年にもわたって彼らの仕事にしている人々や組織なのか:関係詞/現在完了(who've) make+仮主語+C+不定詞(made it their business over the decades to tell cats) 関係詞(what they should)  

 

腰の据わったミュージシャン達やアーティスト達が関わっていない所で、ジャズがどのように人手に渡っているかと、そのいきさつを話そう。これから話すことは、これまで僕達がステージに立ったフェスの多くに顕著に見られた現象だ。そしてそれは、近頃のジャズに対する定義をした人達に、大いに関係がある。どんな芸術形式にも意味があって、それを考察し、深く掘り下げる方法を解き明かすのに、人は多くの時間をかける。サンバからフラメンコから、何百もの音楽形式があって、それぞれに愛好家がいて、正規の教育体制があり、そこに学ぶ人達がいる。中には発展を続けたり、他の形式と合わせるものもある。学派や流派が数々誕生する。人々は本を書き分析をすることに時間を惜しまない。ついには、演奏者と研究者は、自分達の音楽はこうだ、という一つのものを打ち出し、更にセンスに磨きをかけてゆく。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

25.I've seen the phenomenon running rampant at so many of the festivals at which we've played私はその現象が私達が演奏に携わったフェスティバルの多くにはびこっているのを見かけている:現在完了(I've) 知覚動詞+O+原型不定詞(seen the phenomenon running) 前置詞+関係詞(at which) 3.Every art form has a meaning, and a great deal of time gets spent contemplating that meaning, figuring out how to delve deeperどの芸術形式にも意味があり、多くの時間が費やされてその意味が考えられてより深く掘り下げる方法を解き明かす:過去分詞(spent) 分詞構文(contemplating figuring) 9.People spend their time writing books and analyzing人々は本を書き分析することに時間を費やす:分詞構文(writing analyzing) 

 

こういった芸術形式は全て、教え伝えるに値すると認められた意味を、何かしら持っているというのに、なぜジャズにはそれがないんだろう。ジェフ・ウォードはこう言っている「jazzという語は、英語の中で唯一、語義を持たないものではないだろうか」。それとも逆に、あらゆる意味を持つくらい、広すぎる語義があるとか?他にもこういう音楽形式があるのかどうか、僕にはわからない。音楽ジャンルの中には、定義があまりに広く流動的で、本質的な意味自体がなくなっているジャンルとか、またそれを良しとするファンが多くいるジャンルとか、そういうのがあるのかどうか、僕は知らない。なので、僕は一晩のプログラムが全曲ファンクビートでもホーンセクションを加えている。そしてジャズを演奏する。エレキロックをやる時もサックス奏者を入れる。そしてジャズを演奏する。ラッパーの中には、楽器奏者を少し加えて管楽器にソロを持たせるプレーヤーもいる。そしてジャズを演奏する。となると、ジャズとは一体何だ?ということになる。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

13.But if all of these art forms have some meaning discernible enough for them to be taught, why not jazz?しかしもしこれらの芸術形式全てが教えられるべきだと十分認められる何らかの意味があるのならなぜジャズにはそれがないのか:形容詞・後置修飾/enough for A+不定詞(some meaning discernible enough for them to be) 17.I don't know of another music form with a definition so broad, so fluid, that any essential meaning itself vanishes, or of one with so many supposed advocates happy with that state of affairs私は定義があまりに広く流動的であらゆる本質的な意味自体が消えてしまっているそのほかの音楽形式があるのかどうか知らないし、また多くの見込み支持者がそういった本質的な意味自体が消えてしまっているという状態を幸せに思っているそのほかの音楽形式があるのかどうかも知らない:so A that 節(so broad so fluid that)  

 

(71ページ) 

 

さて、本物のジャズと言えば、演奏する方がちゃんと形式に則って、ブルースによって演奏しスウィングするわけだが、一部の所謂「専門家」連中からすると、古臭くて死んでいる、というわけだ。彼らに言わせれば、今の時代にあって、ジャズはたゆまぬイノベーションが必要で、今のままでは、注目に値し後世に残る価値のある業績は何もないんだという。ファストフード型の音楽形式。こんな言い方をすると、僕はイノベーションに反対しているように思われてしまいそうだけれど、実際僕は、何でも物事の意味を知れ、と勧めているし、そうすれば、まずはともあれ、イノベーションが必要かどうかが、それでわかるというもんだ、といつも言っている。意味の解らないものを目の前にしたって、それに対してイノベーションも何もあったものではないし、意味のないことだと分かれば、時間を無駄にせずに済む。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

1.Now, the real jazz, with people playing and swinging over form and blues, certain so-called experts say that's old and deadさて人々が形式とブルースに則って演奏をする本物のジャズはとある所謂専門家はそれは古くて死んでいるという:分詞構文(with people playing and swinging) 3.They say that jazz today must achieve a state of perpetual innovation, with no achievement meriting contemplation or possessing lasting value彼らは今日のジャズは熟考に値し後に残る価値を持っている達成が何もない状態であるのでたゆまぬ革新の状態を獲得しなければならないと言っている:分詞構文(with no achievement meriting possessing) 現在分詞(lasting) 7.Actually, I encourage knowing what something means so you'll know whether you're innovating to begin with実際僕は物事が何を意味するか知ることを勧めている、そうすれば君は手始めにイノベーションをすることになるかどうかがわかるだろうから:動名詞/疑問詞節(knowing what) 近未来(you're innovating) 不定詞・慣用句(to begin with)  

 

ジャズは薄っぺらなものになってしまっている。そして面白いことに、そうなる過程で出てきた代替の音楽の中身は全て、厚みが増しているなんてことは、全くない。全て薄っぺら。大衆受けするメロディを使わないとどうしようもない和音形式のコンテクストでは、ブルースのフィーリングも薄っぺら、スウィングも薄っぺら、インプロバイゼーションも薄っぺらだ。型にはめられない自由が増えるぞ、と幻想を抱き、そして厚みが減っているジャズが手元に残る。それでもなお、自由が増えれば、ジャズの中身も増えると思われている。じゃあ、自由が増えて、なぜジャズの中身は薄っぺらなの?ジャズはどこでどうしているの? 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

12.Jazz has been watered downジャズは薄められてしまっている:現在完了(has been)  

 

専門家の連中に言わせると、本物のジャズを演奏できたのは、全て前の世代の人達。でも今はもういない。だから今の僕達には多くの自由が手に入ったのだろう。と、こういうワケだ。それじゃ僕達は、次の世代に何を教えたらいいんだろう?専門家や批評家の連中が言うように、本物のジャズを演奏できたのは、全て前の世代の人達だけ、というなら、それを次の世代にやらせたい、というの?でも専門家や批評家の連中の話では、古き良きスウィング・ブルース・ソウルフルな音を形にしても、今やそれらはカビ臭いと言うよね。だったらジャズは、もはや何の意味も持たない、ということだ。それとも何か?次の世代には、より多くの、いわゆる自由と言うやつを与えたいというの?こんな感じで。「さぁ、若きジャズミュージシャン達よ、君達に自由が増えれば、ジャズは薄っぺらになるけれど、気にするな!だって、どちらにせよ、ジャズとは決まった意味はないモノなのだからな!」。そんな物の考え方が身についてしまっている子達に、どうやってジャズを教えればいいの?と言う話だ。それで次が、この話のオチ、なんだってさ「ジャズなんか教えるな!発達してゆかないモノなんだったら、ジャズは死ぬしかないだろ?え?」。でもそうだとしたら、あらゆる音楽がジャズと言えるものになれるのは、なぜ?食べ物の中に含まれる塩分じゃないけれど、形は消えてもなくなっているわけじゃないから、あらゆる音楽の中にジャズは息づいているのでは? 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

24.Do we want them to play the jazz that older cats played because the experts and critics say those are the only people who played it?私達が彼らにより年配のジャズ奏者達が演奏したジャズを演奏させたいのは、専門家と批評家連中が彼らがジャズを演奏した唯一の人達だからか?:不定詞(to play) 関係詞(that who)  

 

要はこういうこと。批判的な論調の人達が決めつけたジャズの定義のせいで、ジャズは自分で自分の首を絞めるように仕向けられてしまっているんだ。なぜなら、ジャズが存在するのは、たった二つだけ。今は亡き巨匠達の演奏フォームか、今やジャズとはほとんど言えないような演奏スタイルか、どちらかの中にだけ、ということだ。もはやジャズは沢山だ - やったね!自由に他の文化の音楽をメチャクチャに演奏して「これはジャズだ」というもよし、自由に、バックビート系の曲を何でもかんでも演奏して、「最先端のジャズ」というもよし、自由にヨーロッパの前衛音楽を何でもかんでも演奏して、「新しいジャズ」というもよし(笑)。でもまともにスウィングやブルースなんかやっていてはダメだぞ(笑)。それだけでは、今のジャズを作ってゆく中では、ストップがかかってしまう(笑)。何しろ「今は亡き巨匠達」が、君より前にやってしまっているのだから(笑)さあて!ディキシーランドの話でもしようか!(笑)ホットトディ(酒)でも飲まなきゃやってられないよ!(笑)こんな音楽、薄っぺらにして息の根を止めてやろうじゃないか(笑)どうせ最初からそれが目的だったんだろう?(笑)ジャズなんか教え伝えてゆくものじゃない(笑)そんなことをしたら、前に話した「偉大な真実」にめぐり会ってしまうし、それは「大いなるウソ」とかち合うことになる。その「大いなるウソ」とは、世の中には生まれながらにして客観的に見ても他より劣っているがゆえに、虐げられて当然という人達がいる、ということ。どんな人種であろうと起こること、と信じられている。今の時代は、人種間で、でも様々な時に性別間でも民族間でも起こることかもしれない。でも、このジャズという音楽ってやつは、いずれ「神が選ぶもの」と言い出しかねない。でも、そのメッセージを誰が伝えることになるかを決めることが出来る人なんて、この世にはいない。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

13.The point is : Critical institutions have codified a definition of jazz that works like assisted suicide, since jazz exists only in the form of deceased masters or in styles that have almost no jazz in them大事なことは次の通り:批判的な各組織は医師による自殺幇助のように機能するジャズの定義を成文化した、なぜならジャズは今は亡きジャズの巨匠達またはほとんどジャズの要素を含まない音楽スタイルの中にのみジャズは存在するからである:現在完了(have codified) 関係詞(that) 16.You are free to play other culture's music badly and call it jazz, to play any form of backbeat music and call it cutting-edge jazz, any style imitating European avant-garde music and call it new jazz君は自由に 他の文化の音楽をひどく演奏してそれをジャズと呼んだり、バックビート系の音楽を何でもかんでも演奏してそれを最先端のジャズと呼んだり、ヨーロッパのアヴァンギャルド系の音楽を真似してそれを新しいジャズと呼んだりする:不定詞(to play) 現在分詞(imitating) [p.73,2] And the great lie is that there are people who by birth are objectively inferior to other people and who deserve to be mistreated, and that's a belief that has nothing to do with race, manそして重大なウソというのは、世の中には生まれながらにして客観的に他の人達より劣っていて虐待されるのも当然だという人々と言うのは存在するし、それは人種とは何も関係がない信念だ、というもの:関係詞(who that) 不定詞・慣用句(has nothing to do with)  

 

(73ページ) 

 

ここまで話してきた、この二つの力は、どうしたら相容れるようになるのだろうか?ジャズの演奏に飢えている若いミュージシャン達の層が、数も質も厚くなっているのと同時に、ジャズの希薄化も進んでいるという。矛盾しているように見えるけれど、これがいつの時代も現実だ。デューク・エリントンの作品を、雑然としているという人達もいた。ルイ・アームストロングの演奏をコケにする人は沢山いたが、同時に別の人達は「サッチモは要チェックだ」としていた。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

10.An ever growing, ever burgeoning critical mass of young, hungry-to-play musicians existing right alongside the dilution希薄化と同時に成長を続け急増している実存する若くて演奏したくてたまらないミュージシャンの無視できない大群:現在分詞(exisiting) 

 

残念なことに、今の時代、自分の主義主張をしっかり言う人は以前より少なくなってきている。だから真剣に物事に取り組む人達には、以前より多くのストレスがのしかかっている。今の文化は歯止めの効かない堕落と共に、キチンとした知性の在り方の衰退を経験している。堕落の程度が大きくなると、これと戦う「勇敢さ」も、より高いレベルが求められてくる。何せ、その報酬が割に合わないからだ。そして真剣さは、ストレスによる心身の崩壊のリスクを高める。その間、ずっと死ぬ思いをする可能性もある。君も昔は、自分の視界に入るモノに手を付ければ、自分なら必ずや目に見える違いを実現してみせる、という幻想を抱いていただろう。でも自分の目標に着手している間に、君の敵もまた攻撃のネタを準備している。君が戦略を練っているからというだけでは、奴等は準備の手を止めはしない。酷い話だよ、まったく。批判しようとする心が、君の真剣さを試そうなどとういう考えを増長して、君が真剣であれば、尚更それを止めない。止むのは、二つの時だけ。一つは君がトップアイドルに登りつめた時。もう一つは、年を取って役に立たなくなって干される時。リーマスおじさん(ディズニー「南部の唄」の原作)じゃないけれど、女の子達を見つめるけれど、手は付けない、みたいな感じだ。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

17.Thus, more stress lies on the people who want to be seriousこの様にしてより多くのストレスが真面目にやりたいと思っている人にのしかかる:関係詞(who) 24.When you're young, you hold the illusion that what you do will make a tangible difference in what you see君は若いうちは君がすることは君が見えるものについて目に見える違いを生むという幻想を抱くものだ:関係詞(that what) [p.74,4]That's the beauty of it:それはウツクシイ話だ:反語(beauty) 6.When they stop, you've either become the icon of icons or have been put out to pasture like Uncle Remus, who looks at the girls but “him don't touch.”彼らがそれを止める時と言うのは君がアイドルの中のアイドルになるかリーマスおじさんという女の子達を見つめることはするけれど触らないという人物のように年を取りすぎて仕事の役に立たず干されるかどちらかだ:現在完了(you've become or have been put) 関係代名詞・非制限用法(Uncle Remus, who) 

 

(74ページ) 

 

アンソニー、さっきのディキシーランドの話は、アメリカの民主主義の言わんとすることと、照らして、並べて、見比べてみると、とても皮肉なものに見えたんじゃないかな。これだけ多くの人々、とりわけ白人が、ジャズをアメリカが誇る音楽として実際に受け入れているのに、このジャズに対する逆風の圧力は、どこから来るの?と言う話だよね。結局、敵対的発想が根底にあるんだよ。少なくとも、あのジェリー・ロール・モートンの時代からね。彼は、自分は出版社に搾取されてた、と言っていたけれど、ずっとその流れは今日まで、黒人の平等問題について書かれることや、モートンを過去の遺産として封じ込めてしまう、といった具合に続いているんだよね。でもそれがアメリカ社会における日々の生活の現実であり、国の歴史を表している。それは繰り返されていることだ。南北戦争の結果行われた、国の再統合、公民権運動の結果論じられるようになった「アメリカの再生」。 

 

アメリカの歴史では、黒人と白人は歩み寄っては離れてゆき、そのたびに、両者が最接近化した地点が巡り廻って同じ地点が、次は近くなってきている。でも現代もなお、人種の平等は上手くまとまった、とはいっていない。僕もついつい「クロンボ」と言ってしまうけれど、何せこの言葉は、ジャズでもアメリカの人種問題を扱った文学作品にも見受けられる独特なものだからね。そして白人と黒人はお互い好きだと思う人達もいれば、その逆もいる。でもね、本当のことを言うと、ジャズにしろ、芸術活動そのものに興味を持っている黒人なんて、ほんの一握りなんだ。 

 

(75ページ) 

 

そしてこれはジャズに限ったことではない。教会音楽に何が起きたか、見てみよう。今時のゴスペルの最新曲を何か聴いたかい?ロックのリズムだの、腰を振ったりだの、まるで土曜の夜のパーティーだね。他に、教会の礼拝活動についても、ロックのPVやら、バスケのシューズのコマーシャルやら、あらゆる所でおふざけのネタになってしまっている。そのうち裸踊りでもやりかねない勢いだ。神聖さが希薄になってきつつある。歯止めがかからなければ、いつか無くなってしまうのは、油田と同じ。皆に行き渡るくらいある、と思っていても、いつか必ず枯渇する。無限にモノは存在しない。残り100年としても、最後の瞬間は予告もなくやってくる。それで終わりだ。問題解決は今この瞬間にやろう。特に文化のことについては、待ったなしだよ。文化の低下は避けられない、なんて僕は思わないし、思ったこともない。世の中は変えることが出来るし、変えようじゃないか。君達若手ミュージシャン達は、何か行動を起こさないとね。このことについて、もっと話そう。 

でも今夜はここまで。僕はもう寝る。君は練習に取り掛かり、世界を救うことを考えること。 

おやすみ。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

9.Next thing, you'll see them in church getting naked次は君は彼らが教会の中で裸になってゆくのを見ることになるだろう:知覚動詞+O+現在分詞(see them getting)  

 

 

次回 第11回は、 7.「音楽とモラル」 (2003年8月31日) を見てゆきます。