【英日対訳】ミュージシャン達の言葉what's in their mind

ミュージシャン達の言葉、書いたものを英日対訳で読んでゆきます。

「To a Young Jazz Musician」を読む  第11回

「To a Young Jazz Musician」を読む 

11回:音楽とモラル 2003年8月31日  

 

今回は、全て見てゆきます。 

 

(77ページ) 

 

親愛なるアンソニー 

僕達の間で交わしているこの手紙は、毎回音楽のことや、一種の哲学の格闘技みたいなことを話題にしているね。格闘技の方は、君は君の面倒な連中とはやりたくないだろう。こういった話題ばかりいつも語り合っているけれど、君の方は上手くやっていることを願うよ。せめて君にとっての利害関係にからまない所だけでもね。 

 

(語句と文法:数字は行数) 

1.These letters are always about music and the type of philosophical wrestling that you wouldn't wish on your enemyこれらの手紙はいつも音楽と君が君の敵に対して望まない哲学面での格闘技についていつも書いてある:関係詞(that) 仮定法過去(you wouldn't ) 

 

でもね、ほら、僕だって毎日の終わりに頭をリラックスさせようとする時には、君からの大きな質問と格闘するのはカンベンしてくれよな。最後にくれた手紙で、いい質問をひとつしてくれたね。また僕を荒波の海へと引きずり出そうとしているな。フリージャズは全て堕落だと思うか?こんな質問、誰からもされてなかったよ。ここ2・3週間に交わした手紙で話した、自由・枠組・そしてフリージャズについて、君なりにずっと思いをめぐらせてくれていたようだね。僕にとっては、フリージャズはノープロブレムさ。実際、君にはいつもフリージャズの極め付けを見つけて、演奏するよう言っているじゃないか。僕の父はいつもこう言っていたよ「実際その場に言わせないのでは、何を言ってもただの想像でしかない」。一つ一つの経験が、君の成長に全て効いてくる。ではここで、僕から難問を一つ。欧米文化の核心に迫るものだ。じっくり考えて欲しい。抽象主義は、そうでないものより進化したものと言えるのか?抽象主義では、手を加えすぎて退廃的だ、なんてことが起こり得るのか?別の言い方をしてみよう。ジョイスの「フィネガンス・ヴェーグ」は、シェイクスピアの「マクベス」よりも洗練された文学作品なのか?アーノルド・シェーンベルクの音楽は、ベートーベンの「運命」より進んでいて満足できる度合いも高いのか?抽象的なものの言い方の方が今風なのか?そして芸術の退廃は、意図して起こるものなのか?それじゃ、今回は抽象主義(フリージャズ)、芸術の退廃、音楽のモラルの概念そのもの、これらについて話をしよう。 

 

(語句と文法:数字は行数) 

11.You must have been musing over all those notions about freedom, structure, and abstraction we talked about a few weeks back君は2・3週間前に私達が話をした自由や枠組みや抽象化についてこれらの概念全てに思いを巡らせていたに違いない:推測/現在完了進行形(You must have been musing) 関係詞・省略(all those abstraction [that] wee talked) [p.78,2]I'm telling you to play the most abstract music you can find君が見つけることが出来る最も抽象的な音楽を演奏してみろと言っているんだ:不定詞(to play) 関係詞・省略(music [that] you can) 6.But I'll drop a big question for you to ponder now, one that goes to the heart of our Western artistic conceptしかし私は君に考えるべき質問を一つ投下しよう、私達の欧米の芸術の概念の核心に迫るものだ:不定詞(to ponder) 関係詞(that)  

 

(78ページ) 

 

退廃とか堕落とか、と聞かれると、状況によって答えが決まってくる。僕らが洗脳されている世の中の価値観が大きな決め手だからね。いくつか例を出そう。レスター・ヤングコールマン・ホーキンスと違うスタイルで演奏した時、多くの人は、これを堕落した演奏だと考えた。テロニアス・モンクがブルースに不協和音を取り入れてピアノ演奏をした時もそうだった。デューク・エリントンが、それまでよりも洗練された楽曲、演奏時間の長い形式、こういった音楽を書き始めた時、人々は「落ち目の始まりだ」と見て取った。当時はジャズバンドと言うものは、ダンスミュージックを演奏するものだ、と思われていたからね。ダンスミュージックじゃない曲をジャズバンド如きが演奏するなど、身の程知らずだ!というわけ。歴史の教科書をひっくり返してごらん。こんな類の話はゴロゴロしている。「退廃・堕落」と称されるものが、血統書のない犬猫みたいに扱われて世の中に現れたと思ったら、実は先見の明があって、その時点での世の中の価値観が持つ弱さというものを露呈して見せた、なんてことはよくある話だ。だからこそ、僕がいつも思っているのは、本当の意味での退廃とか堕落とか言うのは、やはり意図的な行為によって起きるものなんだ、ということだ。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

16.Ask me about corruption and context will govern my answer, because much depends on what norms have conditioned us to feel瓦解について私に質問しろ、そうすれば状況が答えを決定する、なぜなら大半は規範が私達に感じるよう慣らしているものによるからである:命令文+and(Ask and) 関係詞/現在完了(what norms have conditioned) 不定詞(to feel) 22.When Duke Ellington began writing more sophisticated music, longer forms, people viewed that as a sign of corruption, because a jazz band was supposed to play dance tunesデューク・エリントンがより洗練された音楽やより長い形式の音楽を作曲し始めた時人々はそれを瓦解の兆候と見て取った、なぜならジャズバンドと言うものはダンス音楽を演奏すると思われていたからだ:動名詞(writing) 不定詞(to play) 25.Check history and it'll show you numerous instances of this sort, where corruption appears as the bastard child of the insightful exposing weakness in the status quo歴史を確認してみろ、そうすれば歴史はこの類の膨大な例を君に示すだろう、その例とは瓦解が現状の弱さをさらけだしている洞察力に満ちた混血児のように見える:命令文+and(Check and it'll) 関係詞・非制限用法(sort, where) 現在分詞(exposing)  

 

(79ページ) 

 

ジャンルを問わず、超一流の音楽家が自身の最高傑作を生むのは、何も気にせず自分を出し尽くした時であるのは、このためだ。イーゴル・ストラヴィンスキーが、歌謡曲では大成功できなかった理由がわかっただろう。時にジャズミュージシャンにとっては、ポップミュージックに安易に手を出してしまうことはあることだ。「これ、ポール・マッカートニーの曲だ。いつもやっているのより手頃だし、ちょっと手を付けてみるか。」大間違いも甚だしい考えだ。一つのことに秀でるには、自分を出し切らなければいけない。なめた態度など、ありえない。ジャズポップとか言う音楽が大抵ひどいのは、このためだ。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

8.Sometimes it's easy for a jazz musician to think he can just go into pop music時々ジャズミュージシャンにとってポップミュージックに入ってゆくことが出来るかもしれないと考えることは簡単なことだ:仮主語(it's) 不定詞(to think)  

 

意図的な行為によって起きる堕落の、比較的よく知られている例が、金儲けへのすり寄りだ。「これは本意じゃないけれど、お金になるから、やらせて、、流行に乗らせて。」多くのミュージシャン達が1970年代にこうした行為に走り、僕達はそういった作品を耳にした。今となってはそうやって生まれた作品は、彼らの遺したもののうちの主要な物には、なっていない。マイルス・デイビスの極めつけは「Kind of Blue」であって、「On the Corner」でもなければ、あの「Bitches Brew」でもない。音楽に対する考え方がどうのこうのと言っているわけじゃない。単に何年にもわたって起きてしまっていること。それだけの話。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

23.That's just what has happened over the yearsそれは単に何年にもわたって起きていることである:関係詞/現在完了8what has happened 

知識人や学会の類にすり寄ってしまうことも有り得る。「金もうけには走らないけれど、いい評価は受けたい」あるいは「この派閥に入りたいから、自分のやり方を合わせます」とね。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

25.I don't want to pander to the marketplace, but I do want to get good review私は市場には迎合したくないけれど良い評価はもらいたい:不定詞(to pander to get) 強調(I do) 

 

(80ページ) 

 

スポンサーやプロモーション会社に、あるいは学者さん達にヘコヘコして、そして売れればいい、あるいは高い評価を論じてもらえればいい。そんなの良くある話だ。だってその分の報酬や見返りがはっきりしている。でも君自身の未熟さにすり寄ってしまったら、間違いなく根性が腐ってゆく。君が指回しが苦手だからと言って、速い指回しの演奏を否定する。君がゆっくりの演奏を演奏できないからと言って、バラードなんて演奏する価値は無いと言う。転調が苦手だからと言って、転調なんて時代遅れだという。自由な感じの流動的な表現形式に適応できないからと言って、それを否定する。これって、音楽にはモラルの概念が無いから起きてくる、というのが事の核心だと僕は思う。もしあるとしたら、どんなものだろうか?何にせよ、モラルと言うものは、例えて言うなら、滑りやすい坂の上に乗っているようなものだ。でもモラルが相対的なもの(基準がなく、何かと常に比べて判断するようなもの)であり、そして押しつけがましいモノ、と見なされてしまうような時代にあっては、自由こそが国の最重要とばかりに大事にされてしまうわけだから、モラルは苦しい立場に置かれてしまう。多くの場合、モラルと自由は真正面からぶつかり合うものだ。もしモラルがあるとするなら、誰がそれを皆に守らせるか?そしてモラルが強制力を持ったら、今度は逆に自由はどう保証するか? 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

12.What would that be?それは何になるかもしれないのか:仮定法過去(would) 13.But in an era that regards morality as a relativistic and repressive notion, where freedom is held up as the coin of the realm, morality is in troubleしかしモラルを相対論的で抑圧的な観念と見なす時代には、自由は王国の金貨として支えられ、モラルは困った状態になる:関係詞(that) 関係詞・非制限用法(notion, where)  

 

とにかく、今の時代、売れる・売れないを気にしないというわけには、おそらくいかないだろう。売れるモノを持っていなければ、どうしようもないのだから。そして音楽に高い精神性などない時代に生きる人は、自分の「売り物」をどうやって売って行けばいいのか?売り込む、という行為は避けては通れないのが現実だ。耳タコだろうが、「さて、彼は課せられた事はこなしたぞ。」これが今の時代の必要事項みたいなもの。「おい、やれと言われたことは、ちゃんとやれよな。」それでお金をもらえれば、一丁上がり、というわけだ。実際、君の仕事の価値を評価する基準は、経済的な見方だ。「いくらで売れた?」ってね。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

19.Anyway, in our era, it's probably impossible to sell out to the marketplace, because you have to have something to sell outどちらにせよ私達の時代においては商業市場の信義に背くことは恐らく不可能だろう、なぜなら君は売り切れるものを何か持っていなければならないからだ:仮主語(it's) 不定詞(to sell) 23.Well, he did what he had to doさて彼は彼がするべきことをした:関係詞(what) 

 

(81ページ) 

 

君に取り組んでほしいことを書いたことがあったね。自分のペースを守ること。聴衆を満足させること。そのためには練りに練った明快なやり方で、君の腕前がイマイチなら、「この曲は本当はもっと素晴らしいぞ」と。それとも自信があるなら「この曲はこんなに素晴らしいぞ」と。これを聴衆に伝えることだ。どうやってやれるか、確信は持てないけれど、君ならきっとやってくれるだろう。僕の役目は、君がすべきことと、今がチャンスだと思った時にそれを、この二つを君に指摘することだ。スケール(音階)を練習したり、変拍子の対応力をつけたり、というのは、今更当たり前。(わかってる。音飛びCDみたいに技術的なことを何度も言うなって思っているんだろう?)今の君には、もっと深く、大きくて、哲学的なことについて、自分なりに答えが出せるようになってもらわないといけないと思っているよ。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

3.I've related your challenge before: to be in your time and to fulfill the needs of your listeners with a well-developed, clear vision of how wonderful this music can be, or is私は君の挑戦について以前話をしたことがある。自分のペースを守ること、そしてこの音楽がどんなに素晴らしくなる可能性があるか、または今現に素晴らしいかについて十分に成長した明快なビジョンをもって君の聴衆の要求を満たすこと:現在完了(I've related) 不定詞(to be to fulfill) 7.Playing scales or knowing when a time signature changes, that's something you should just know how to do音階を演奏したり拍子記号が変化するのを把握することは君がとにかくどうやったらいいかを把握すべきことだ:動名詞(Playing knowing) 関係詞・省略(something [that] you should) 

 

 

 

ジョン・コルトレーンソニー・ロリンズの話をしよう。二人ともまだ若くて、その才能が前回になる直前の頃だ。どちらかが、もう一方に言った「俺達、音楽の力でさ、本気でこの世界をまともに変えていきたいよな。」イメージできるかい?二人の男たちが、あの才能を持って、この志を持って、それも音楽に力を与えて、世の中をとことん変えてしまおうなどという志だ。これこそが、この二人の演奏が別格である所以だ。コルトレーンもロリンズも、そんな力を持つジャズは存在すると信じ、自分達の手で作り出したいと思った。その希望が鍛錬の原動力だったんだ。その次元の創造力を持つミュージシャンになること、これを動機として、そして目標にした。「SUVを買えるようになりたい」じゃないんだよ。 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

14.One would say to the other, “Man, we want to play some music so powerful that it'll actually change the world for the better.”一人がもう一方によく言った「おい、私達は十分力強くて本当に世界を良い方向へ変えてしまう何かしらの音楽を作りたいと思う」:過去の習慣(would) so C that SV(so powerful that it'll)  

 

より多くのアイデアが生まれ、成長し続ける中で、君も彼らの様な深いレベルで、生きる時代、その文化、人々のいる都市や国、ひいては世界中との関わりを意識するように、是非なってほしい。その関わり合いやその言葉を交わすことが、君に演奏の場を用意してくれる。演奏が始まれば、知らないうちにメッセージがそれに乗って発信されてくるからだ。その時、君は何を伝えることになるだろうか。それこそが、大一番の瞬間なんだ。君はこれからそれを学んでゆくだろう。学ぶ者が集まる場所へと足を運ぶことになるだろう。そこで言葉のやり取りが生まれる。ロリンズとコルトレーンが心に抱いた思いを語り合ったのと、まさに同じようにね。ただこの二人は、世に名演を発信し始めたのは、そこまで至る間に大きな志を語り合った後とのことだった。言葉のやり取りは大きな価値を持つ。それによって君の演奏哲学を確立し、君自身の現実の姿をしっかり把握することが出来る。勿論演奏技術は、それはそれとして磨くこと。その中身は、君の志によって決まってくるだろう。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

[p.82,5]What would you say while you're playing?君は演奏をしている間何を言うつもりか:仮定法過去(What would you) 8.But once they started the doing, the time for talk had passedしかし一度その行為が始まったなら、話をする時間は終わってしまったということだ:過去完了・大過去(had passed)  

 

(82ページ) 

演奏する時は、君自身の未熟さとしっかり向きあう正直さを確実なものにすること。だからこそ、練習はミュージシャンにとっては、モラルがそこに現れる、と言われるんだ。最高レベルの課題を自らに課し、自らの取り組みを自ら監視することを進んでやれ、ということだ。そして君の音楽については、君の周囲にある堕落の罠が何か、をしっかり考えること。現実に負けて君自身の物の見方を失ってはいけない。しっかりとした考え方と大胆な行動が、それに相応しいオーラを君のサウンドに吹き込んでくれる。マーチン・ルーサー・キング牧師の声に響く精神の巨大さ、ルイ・アームストロングのトランペットから光り輝く珠玉の音色のようにね。それは困難に遭っても、節度をもって向き合うことが出来る力となるんだ。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

13.When you play, make sure you're honest enough to confront your own deficiencies.君は演奏する時は、君が君自身の欠点に向き合うくらい十分正直になることを確実にすること:be+C+enough+不定詞(you're honest enough to confront)  

 

どのように、君の生きる時代に潜む堕落に向き合うか?まず、その存在に気付き、正確に把握すること。堕落は「ボクは堕落だよ~」などと、旗を振っているわけではない。大抵は変装し、自らを「自由解放」と偽っている。「こっちへおいで、自由になれるよ~」とね。堕落が当たり前で、あたかもそれが標準なんだ、となりすますような時代に育ってきた中では、堕落の存在に気付け、と言われても難しいかもしれない。それは僕も解っている。でもやるべきことは、君が考えるよりシンプルなんじゃないかな。何かを見て、「これは本当に人を堕落させる」って、どうやったら判るか?その「何か」は、批判をされてもそれを受け付けようとはしない。マーカス・ロバーツがよく言っていた「デザート以外の食べ物を主にして育ってきた人は、デザートが無くても気にしない。デザートを主にして育ってきた人は、食べ物がないという状況に我慢が出来ない」 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

[p.83,1]Corruption's usually disguised, trying to pass itself off as liberation:”Come, this will free you”堕落は大抵は変装し自らを解放と偽ろうとする「こい、これは君を自由にするだろう」:分詞構文(trying) 

 

(83ページ) 

 

今日、堕落が頻繁に居座っているのが、このところの新たなアメリカの風潮の核心。そこはバカバカしさが支配し、バカバカしい行為がそれと認識できない程にまで姿を変え、中にはその姿を変えることを、真面目な気持ちでせっせと行っている人もいるくらいだ。実際は「真面目な気持ち」という言葉自体、僕達が世に送り出したもののどれに当てはまるか、と言われてたら、殆どどれにも当てはまらないかもしれない。ただ単に拠り所にしているのは、金儲けになるかどうかに関する「真面目な気持ち」。それは、自分が売って金を儲けたいものをマーケットに上げて、できるだけ中身の薄っぺらなものに対して、出来るだけ高い金額を吹っ掛けるための権利みたいになっている。大概の映画を見てみれば、片っ端から殺し合ってみたり、必要性もなく肌を露出してみたり、話の筋などどうでもよくなったりしている。音楽は、というと、素人が大がかりで中身のないものを創り散らかしている。ここで一つ話を。バカバカしさが極まるとどうなるか、についてだ。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

11.Today corruption sits most often in the heart of our new American way, where the absurd reigns, an absurdity morphed beyond the point of any recognition, to the point that some conflate it with integrity今日堕落は私達の新しいアメリカの方法の中心部分に大概よく居る、そこはバカバカしさが支配し、ばかげた行為がいかなる認識も及ばないほどに姿を変えていて、それは一部の人々が誠実さを持ってそれを合成するほどだ:関係詞・非制限用法(way, where) 関係詞(that) 15.We simply cling to commercial integrity: the right to put whatever we want into the marketplace, and charge as much as possible for as little as possible私達は単純に商売上の誠実さにしがみついている。それは市場に私達が望むものなら何でも乗せてしまい、そしてできる限り少ないモノに対してできる限り多くのお金をふっかける権利だ:不定詞/関係詞+ever(to put whatever) 

 

ある小学校へ行った時のこと。先生方がこう言った。「今朝は皆さんのために、学校の方で出し物をご用意していますので、ご覧下さい。」すると、男の子が一人、テショーンという子が、ラップを歌いながら出てきたかと思うと、彼の股間を掴み始めた。僕は先生に、「あの男の子、自分の股間を掴んでいますけれど・・・」するとその女の先生は「あの子達の間で流行っているんですよ」。別の日、今度は中学校。吹奏楽部の先生が来てこう言った。「練習した曲がありますので、聞いてください。」その曲、何だと思う?BoowYの「Get It to Me」だ。あの過激な内容の曲を?僕に聞いてくださいってか?バカバカしさの極めつけ。誰かが割って入って理由を言った。「生徒達が演奏したいというものでして・・・」生徒達が演奏したい?教えているのは、あんた達だろうが。文化が自ら節度を持たなかったらどうなるか、まぁ、当然こうなるよね。節度をなくした文化で育った若者達が、自分の力でこの惨状を認識して、それに負けない行動をとるなんて、出来るわけがない。これは誠実、これは堕落、これはバカな行為、誰かが責任を持って教え示してやらなかったら、自分で見分けることなんて、どうしたって無理だ。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

24.A little boy, TeShawn, comes out rappin' and starts grabbing his johnsonテショーンと言う名の小さな男の子がラップを歌いながらやってきて、自分の股間を掴み始めた:分詞構文(rappin') 動名詞(grabbing) [p.84,6] That's what the kids want to playそれは子供達が演奏したいものだ:関係詞(what) 不定詞(to play) 

 

(84ページ) 

 

このバカバカしさに流されてしまう有様は、国内をツアーで回っていて最もショックを受けることに間違いはない。何千人もの色々な人々と話をしてきて、それぞれ取り組んでいることは違うけれど、皆同じようなバカバカしさに流されている。アメリカに一体何が起きたのだろう?何かの機械がベルトコンベア方式で、国民全員のおでこに、もれなくスタンプを押しまくったのか?どの職業でも大差ない。若干その流されかたに違いはあるけれど、ジャズミュージシャン、ヒップホップアーティスト、アフリカ系アメリカ人、革新系、保守系と、音楽のジャンルや人種、支持政党が違っていても、それぞれ内にする台詞がある。売れるチャンスを狙って、役のオーディションを受けて回る役者達みたいだ。そして一人孤立は許されない。必ずどこかのグループに押し込まれる羽目になる。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

19.The jazz musicians all have their jazz thing they hold toジャズミュージシャン達は彼らが守るジャズのことを全て持っている:関係詞・省略(thing [that] they) 

 

(85ページ) 

 

君自身がミュージシャンとしての立場や在り様を、ハッキリと示さねばならない文化の状況で、君が心に抱く信念が、ある時不誠実さと衝突することになったら、どうなるか?「誠実さに欠けているぞ」なんて、預言者でもない限り、言う資格など誰にもない。自分が嫌悪することを集団でやり散らかす誠実さのカケラもない現状を目の当たりにして、「私の価値基準に従え!」と頑張れるかい?今時のジャズの集まりでは、ジーンズを着てステージに立ったりする。昔は皆スーツだった。今、本番にジーンズを着てステージに出ても構わないとされているのに、何でスーツに戻すんだ?と言われてしまう。ジーンズで本番に出ることは不誠実か?言うだけバカバカしい。だって皆ジーンズを着て出ているし、音にも影響は何もない。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

4.Can you hold absolutist standards, seeing a dearth of integrity when folks do something en masse that you abhor?人々が集団で君が嫌う何かをしている時誠実さがかけているのを見て君は専制主義者の基準を持つことが出来るか:分詞構文(seeing) 関係詞(that) 10.Yet, it seems absurd to say so, because everyone comes to a gig with jeans on and it won't affect how you soundとは言えそのように言うのはバカバカしい、なぜなら皆ジーンズを着て本番に出てくるしそれは君のサウンドがどう聞こえるかには影響しないからだ:仮主語(it seems) 不定詞(to say) 疑問詞節(how you sound)? 

 

批判を覚悟でひとつ。高校時代友人の一人がレストランで働いていた。彼は多分16才かそこらだったかもしれない。テーブルの片付け係をしていた。他の同僚の大半は、家庭持ちの大人だった。ウェイターと片付け係を仕切っていた担当者は部下の神経を逆なでするのを面白がって「Nigger」だの「Boy」だとか、他にも色々南部でよく聞く馴れ馴れしい言い方で彼らを呼んでいた。その友人は、何も背負うもののない16才なわけで、辞めて他の仕事を見つけてやる、と言ってもよかったはずなのに、結局その仕事を拒否したためにクビになってしまった。でも彼より年上の同僚の一人は、クビになるリスクを冒すことはできなかった。参考までに、この話は1970年代のニューオーリンズ、仕事の口がなかった街でのこと。その年上の同僚には4人か5人子供がいた。彼だってそんな仕打ちは嫌だったが、運を天に任せて抵抗を試みるなんて、安易な話ではなかった。だから彼は屈辱を受け受入れ、磨いたナイフは自分の本音を殺すのに使った。でもね、自分が屈辱を受けている、それだけの理由で家族を飢え死にさせる訳にはいかなかった、ということだ。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

13He might have sixteen or thereabouts彼は16才かその位だったかもしれない:仮定法過去完了(might have been)  16.The man in charge of the waiters liked to mess with them, calling them “Niggers” or “Boys” and other Southern terms of endearmentウェイター達を担当していた男は彼らを怒らせることを好み、彼らを「クロンボ」や「ボウヤ」や他の南部の馴れ馴れしい言い方で彼らを呼んださ:不定詞(to mess)   分詞構文(calling)  [p.86 2]But is he going to let his family starve just because he's being humiliated使役動詞+O+原型不定詞(let family starve)  受身の進行形(he's being) 


(86ページ) 

 

物事を決断する時に、誠実さを保つことは大変だ。自分を信じるとか、自分の物の見方に自信があるとか、そんな生易しい話でいつも済むとは限らない。家族を養うか否か、と、そんな差し迫った状況でなかったとしても、誠実さに立って物事を判断することで、自分の居場所を失うかどうかの問題にもなりかねない。仕事に影響が出ることだってありうる。人の心に、自分自身に対する見方に、他人が自分達を認めるかどうかの判断に深入りしてくる。誠実さが原因で、仲間外れにされたいか?自分の信念を伝え続け、挙句のはてに周囲の人達から「またウザいのがいるよ」と言われたいか?ずっとそんなのに耐えられるか?そうなると誠実さなんてものは、こびへつらうものになりかねない。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

8.Survival can stretch beyond the job, delving deep into the personal, the way we view ourselves, the validation or lack thereof that others show us生存が仕事にまで広がってきて、個人の奥へと、私達が自分達自身を見つめる見方、他の人達が私達に示す承認あるいはその不足を探しつくしてくる:分詞構文(delving)  関係詞・省略(the way [that]we) 

 

僕の生徒達に言わせたことがある「自分の考えを、本当に、本当に、信じて疑わないなら、それは最後には常識になると信じている!」とね。そう思わせてくれるのは自分だけ、誠実さで物事は成就すると思わせてくれるのも自分だけ、だから、ピュアな心でいつもいなさい、と彼らに言っている。そうしたら、誰かが必ずこう言ってくるだろう「誠実さに基づいて行動する人々のしたことがリスペクトされることだって、きっとあるだろう。もっとも、そういう人々が、敵対する人々に勝ったら、の話だけどね。」 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

16.I've had students say that if you really, really trusted and believed in what you thought, you would assume that your viewpoint would eventually become the norm:私が生徒達に言わせたことがあるのは、もし自分の考えていることに本当に本当に自信があるなら、君の物の見方は最終的には常識になるだろう:現在完了/使役動詞+O+原型不定詞(I've had students say)  仮定法過去(if you trusted you would)  関係詞(what)  22.And someone, inevitably, will say there must be examples where people have come to respect what folks of integrity did, if only because those people outlasted the oppositionそして誰かが必然的にこう言うだろう:関係詞(where what)  現在完了(have come)     

 

推測の話をしよう。皆、テロニアス・モンクのことをリスペクトしていたけれど、彼が長い年数演奏活動をせずに自宅にこもってしまった時、リスペクトしていた連中はいなくなってしまった。誠実さは厳しい選択を迫ってくる。そこからは逃げられない。アンソニー、君もそうなったら、自分のやり方で決めなくてはいけない。どれが正しくて、どれが間違えているか、とうのはない。君が何を選ぶか、ちゃんと理解できる力量が備わっているか、全てはそこにかかっている。誠実さを測る基準なんてものが無い時代に生きていたら、どうすればいいかなど、そう簡単には解りようがない。「これを学ぼう、あれをま学ぼう」と言う話は、なくなってしまっている。やるべきことがわからない、なんて話は、しょっちゅうある。 

 

(語句・文法の要点::数字は行数) 

6.They depend on you being equipped to understand your choice, to even understand that you're making one in the first placeそれらは君が自分の選択を理解できる能力がそなわっているか、そして、第一に、君自身が選択をできるのかどうかにかかっている:現在分詞(being)   

 

僕だってかつては君と大して変わらない、弱い人間だった。長い期間、舞台上ではモニターを使っていた結果、音色が全然良くならなかったんだけれど、当時はそのことに気づくはずもなかった。何せ、誰もがモニターを使って演奏していたからね。誰からも指摘されなかったし、年寄先輩のいうことなんか聞きはしなかったしね。要は、思い上がりだ。「何もわかっていない。こちらは1000人の客、奴等はせいぜい20人位の客相手なんだぞ」と考えていた。 

 

(語句・文法の要点::数字は行数) 

12.For many years I played onstage with a monitor, a choice that kept me from developing my sound長年の間私はステージ上ではモニターを使って演奏していた。それは私のサウンドを向上させることを邪魔する選択だった:同格(monitor, a choice)  関係詞(that)  動名詞(developing) 

 

ある日、ギリシャの円形劇場で本番があった。当時24才、ずっとモニターを使っていた。会場の人がやってきてこう言った「ここは電源が使えないので、全てアコースティックでお願いします。」さぁ、僕らは考えてしまった。「生音ショボくなるぞ、おい」こういう音楽をモニター無しでなんて、やったことがなかった。でも他にやりようがなく、生の楽器の音での演奏ということになった。ところが結果は、最高の出来だった。結局、舞台上でお互いの音をよく聴けたし、モニターから自分達の音が撥ね返ってくることもなかったからね。やっぱり年寄の言う事は、聞かないといけないね。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

24.And we started thinking “Man, we're going to sound like shit playing acoustic”そして僕達は考え始めた「おい、アコースティックで演奏したらクズみたいな演奏になるだろう」:動名詞(thinking)  分詞構文(playing)  [p.88,2]And that was the best gig we ever played because, finally, each of us could hear the other musicians on the bandstand, and not just our own sound pouring back at us through a monitorそしてそれは私達が今までに演奏した中で最高のものになった、なぜなら最終的には私達一人一人が舞台上でお互いに相手の音を聞くことが出来たし、それは単にモニターを通して自分達に流し返すのとは違っていたからだ:関係詞・省略(the best gig [that]we ever)  分詞構文(pouring) 

 

 

 第12回は、 8 「Moving It Forŵard: The New, New Thing」 (2003年9月10日) を見てゆきます。