【英日対訳】ミュージシャン達の言葉what's in their mind

ミュージシャン達の言葉、書いたものを英日対訳で読んでゆきます。

「To a Young Jazz Musician」を読む  第8回

第8回:4.ジャズを演奏する 2003年7月18日  

  

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スウィングは、アメリカがこれまで歩んだ歴史の根っこの部分に一致する。「困難を排除し、策を編み出せ。」ジャズで言うと、テンポが正しいかを自分で確かめ、演奏すると決めたリズムの難しさを把握しておけ、ということになる。四分音符を戦争する場合、テンポキープは難しい。また、あらゆるタイプの演奏が困難で、しかも聞けば楽しい変形リズムもある。あるいは、ひたすら八分音符の連続するフレーズを演奏することもあるだろう。キチンとしたやり方をもって、冷静さを保ち、よどみなく演奏する。これこそスウィングがもたらしてくれるものだ。 

(語句と文法:数字は行数) 

2.In jazz, that means you challenge the time, and you determine the degree of difficulty of the rhythms you choose to playジャズではそれは君がテンポを検証し君が演奏することを選ぶリズムの難易度を推し量ることを意味する:関係詞・省略(the rhythms you choose) 不定詞(to play) 4.You could play quarter notes, which are difficult to play in time君は四分音符を演奏することもありうる、それはテンポ通りに演奏するのが難しい:仮定法過去(You could) 関係詞・非制限用法(notes, which)  6.Or you could just play strings of eighth notesあるいは君は八分音符の連続をひたすら演奏することもありうる:仮定法過去(Or you could) 8.That's what the swing offersそれがスウィングのもたらすものだ:関係詞(what) 

 

ジャズミュージシャン達が本気で演奏しスウィングしている昔の銘盤を聴いてみよう。今の僕達の演奏とは多くの部分で異なっていることが、聞いてわかる。彼らはグルーヴの奏法を知っていたが、その知識は、殆どが次の世代へ引き継がれず失われてしまっている。今の僕達が彼らに及びもしないのは、スウィングに問題が何かしら存在するからじゃない。むしろ、僕達のスウィンググルーヴの奏法に欠陥があるんだ。いいかい、グルーヴという視点から考えてみよう。もしラテン音楽のミュージシャン達が、下手なグルーヴ感の演奏をやってしまったとする。僕達ジャズのミュージシャン達もそうだが、その場合、本番させてもらっているクラブハウスから追い出されてしまうだろう。でもジャズミュージシャンの場合、スウィングを効かせず演奏して褒められることもあるんだ。もうひとつ、君に理解してほしいことがある。今アメリカでは、スウィングを効かせた演奏は、ある意味苦難の時代を迎えている。でもそんなのは、ラテングルーヴを効かせた演奏には、いまだかつて無縁だ。専門家が寄ってたかってクレイブリズム(ジャズにとってのスウィング)の価値についてボロクソ言うなんてことは、一度もないことだ。一方、アメリカ人には古くから劣等感があって、文化に関しては、ヨーロッパのものは何でもスゴイ、アメリカ的でないものは何でもスゴイ、などという考え方になってしまっている。そんなこと、僕に言わせれば、保守的、あるいは良くない発想だ。ヨーロッパの人達の方から、お宅らアメリカのジャズは立派な芸術だよ、と言ってくれるべきだったんだよ。そして勿論アメリカでは、あの色の黒い厄介者(訳注:ウィントン自身の事)が常に警戒されている。昔、自由解放のど真ん中で、囚われの身だったアメリカ黒人の子孫。その男が居るおかげで、大勢の人達がスウィングなんてもう死んだ、と言い切り、批評家や、所謂専門家と称する大群は、世の中の人々をジャズの本質から目を逸らさせようと、やっきになっている。なぜなら、ジャズは黒人たちの産物で、だからこそ、彼らの不正確な見方で言えば、アメリカ人に相応しくない、というわけだ。 

(語句と文法:数字は行数) 

9.Listen to a classic record of jazz musicians really playing and swinging and you'll hear the difference from much of what we play nowジャズミュージシャン達が本気で演奏しスウィングしている銘盤を聴けば私達が今演奏していることと多くの相違が聞こえるだろう:知覚動詞+O+現在分詞(Listen musicians playing) 関係詞(what) 11.Those musicians knew how to play the groove, and the knowledge of that groove has almost been lost層ったミュージシャン達はグルーヴの演奏の仕方を知っていてそのグルーヴの知識はほとんど失われてしまっている:疑問詞+不定詞(how to) 現在完了(has been lost) 18.I also want you to understand that the act of playing a Latin groove has never been under the type of siege that the act of swinging has been in this country私はまた君にラテングルーヴを演奏する行為はこの国でスウィングを演奏する行為が置かれている苦しい期間の元に置かれたことは全くないということを理解してもらいたい:動名詞(the act of playing swinging) 現在完了(has never been) 関係詞(that the act) 21.There have never been battalions of experts to assail the value of claveクレイブリズムの価値を非難する専門家達の大群なんて存在したことは一度もない:現在完了(have never been) 不定詞(to assail)  

 

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ジャズ以外の音楽形式は、というと、今の「売れればいい」の風潮を目の当たりにしても、胸を張って独自の文化に誇りを持っている。なぜだろうか。僕は南米に行く機会があるけれど、ファンクやロックがあっても、タンゴはちゃんと演奏する。ブラジルにはファンクもあるし、アメリカで耳にするような電子音楽もあらゆるモノがあるけれど、サンバはちゃんと演奏される。「サンバやタンゴなんてやめて、こっちをやろうぜ」なんて誰も言わない。アメリカの「売れれば」音楽もやる、自分達の音楽もしっかりやる。「売れればいいや」は、みんなアメリカから出てきたものだ。でもアメリカ人だって、独自の最高に洗練されたグルーヴ(音楽)がある。でもそれを実際やるとなると、ある種の、ヒドイ、いやいやながらの取り組みにしかなっていない。だから、アメリカ独自の音の躍動「スウィング」は、全て消えてしまったんだ。 

(語句と文法:数字は行数) 

14.Well, let's stop playing all our music to play thisさてこれを演奏する為に私達の音楽は全部演奏を止めよう:動名詞(playing) 不定詞(to play)  

 

今から言う点をハッキリさせておこう。ジャズを演奏する為には、スウィングのセンスと技を身に付けなければならない。スウィングは、ジャズミュージシャンの必須事項だ。ジャズの基礎的な、土台となるような、そしてなくてはならない構成要素だ。ミュージシャン達が集まる。水面下で激しくもがく。結果、エレガントに躍動するインプロバイズされたメロディの数々は、リズムの調和は完璧。この時一人一人は、別の意味合いで狙ったポイントへとビートをちりばめてゆく。究極のギブアンドテイクがここにある。それがスウィングだ。よく聞いてほしい、アントニオ君。君はジャズミュージシャンの一人として、スウィングしないという発想は、自分から遠ざけなければならない。ジャズが元から持つ自然な流れ、ここにスウィングしない奏法を押し付けると、本来あるべき基本的な内面を傷つけてしまう。無理やり中へ歩いて入いらされても、すぐに出てきてしまう。これではどっちつかずだ。スウィングしない、となると、演奏の魅力を出すために、訳の分からないものを自分で創り出そうとしなくてはならなくなる。仮にたまたますごいモノができるかもしれないけれど、スウィング自体が持つ多様性の全てに、特有の意味がある。それは聴衆を君のサウンドへと取り込んでしまう力を持っている。スウィング、とりわけリズムセクションはスウィングに不可欠。なぜなら音楽におけるリズムセクションなるものは、スウィングがその生みの親だからだ。スウィングが無ければ魅力もない。ジャズは人を惹きつける力が必要だ。音量ではない力で、人を惹きつけなければならない。 

(語句と文法:数字は行数) 

24.A group of musicians struggling to elegantly dance improvised melodies in complete rhythmic coordination as each introduces another sense of where the beat should actually beミュージシャンの集団は各々が別の意味でビートが実査の処あるべき場所に提示するにあたり完璧なリズムの調和をもってインプロバイズされたメロディをエレガントに踊らせるべく奮闘している:現在分詞(struggling) 不定詞(to elegantly dance) 過去分詞(improvised melodies) 関係詞(where) [p.50,4]The unswinging is forced onto the natural inclination of this music, something that disturbs your basic, inner sense of how things should beスウィングしないことがこの音楽の自然な志向性に押し付けられる、これは物事が本来あるべき基本的かつ内面的意味合いを侵害するようなものだ:関係詞(that disturbs) 関係詞(how things) 8.Then you're going to be 23/7 or 9/13そしたら君は不足か又は行き過ぎになってしまう:23/7(本来は24/7、1足りない) 9/13(本来は9/11、2多い)  

 

「ジャズを演奏すること」だと漠然とするから、もっと絞って、「ジャズバラードを演奏すること」にしよう。今まで君に言ってきたことの多くが、これから話すことに出てくる。2,3新しい話題も出そう。その中で一番大切なのは「タイム(時間」/テンポ)についてだ。コールマン・ホーキンスは、本番に演奏する曲は、女を抱くようにアプローチする、と言っている。それにはタイム(時間)をコントロールできないといけないね。ベン・ウェブスターなんかだと、バラード演奏の上手さはタイム(テンポ)に関係がある。テンポがゆっくりな曲は、正しいリズムで演奏するのが難しい。拍と拍の間は大きく空いているし、ということは、多くの労力が必要だ。リズムセクションに身を委ねたいところだが、実際はもっとしっかりリズムセクションを導く必要がある。リズムと表情、ゆっくりな曲の演奏には必須だ。 

(語句と文法:数字は行数) 

17.Much of the stuff I've laid on you obviously applies here, along with a few other wrinkles, the most important of which is time私がここまで君に示してきている多くのことが、2,3の他の助言、その中で最も重要なのはタイム、とともに当てはまる:関係詞・省略/現在完了(the stuff [that] I've laid) 関係詞・非制限用法(which) 23.It's harder to play in time when the tempo is slowテンポがゆっくりだとテンポ通り演奏するのはより難しくなる:仮主語(It) 不定詞(to play)  

 

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話、理解できているかな?君がうんと小さかった頃のことを思い出して欲しい。パパやママが、君が意味を全く理解できない、長くて難しい言葉を投げかけていただろう。君は、意味は理解できなくても、使われる文脈から、いつしか君もそれらを使えるようになっていった。今の君は、当時のパパやママと同じように、そういった語を使っているが、意味はハッキリとは覚え切れていないだろう。これはジャズの演奏にも当てはまる。若手が銘盤を聴く。そこで耳にするフレーズ、曲想、音色、暗い記憶を呼び起こす力、については、それを支える土台、組み立て方、思想哲学の知識が若手にはない。知らないまま自分達が演奏しても、本質的な要素が、そこには抜け落ちているのだ。 

(語句と文法:数字は行数) 

5.Nevertheless, you had enough of an idea of the context those words were used in to allow you to use them, tooにも拘らず君もそれらを使うためにそれらの単語が使われていた文脈の考えを十分身に付けた:関係詞・省略(the context [that] those words) 不定詞(to allow) 9.Young cats have heard these things produced by great musicians - tunes, ideas, timbres, and late-night evocations - but don't know any of the underpinnings, the structures, or the philosophies that support those ideas若い演奏家たちが偉大なミュージシャン達が醸し出す節や曲想や暗い記憶を呼び起こすものを耳にするが彼らはその考えを支える土台や仕組みや哲学を何一つ知らない:現在完了(Young cats have heard) 過去分詞(produced) 関係詞(that support)  

 

演奏を成功へと導くものは、基本事項であり、根っこの部分だ。何事も練習は、この根っこを軸として外さず回ってゆかないとけない。家を建てたいと思ったとしよう。誰かの所へ行けば、その人たちはこういうだろう「さて、基礎部分の工事には、これこれが必要です。」その後で、迷宮にせよデカい城にせよ、小さな小屋にせよ、好きなものを土台の上に乗せればいいが、何にせよ土台は欠かせない。バラードを演奏する時の「基礎部分」は、人を恋する気持ちだ。「僕の心は悲しく寂しい/君を想いため息をつく/君を、愛しいきみだけに」今時の若い君には、しょうもなく時代遅れでダサかったかな?こんなの実際見たことあるかと言ったって、ないよね。世の中退廃してくると、恋愛感情とか知的好奇心とかいうものから、衰退してゆく。それはファシストとか、そんな楽しさのカケラもない全体主義思想が存在感を増してくる時代みたいなものだ。以前は素晴らしいとされていたものと、今の時代とのつながりを、奴等はぶち壊すことに使命感を募らせていて、人の心に募らせていて、人の心に上がり込んできて、「お前なんか本当はこうだ」と言い放ちに来ることもある。 

(語句と文法:数字は行数) 

23.I know you haven't seen those ideas running wildly about for a while, if ever君はこれまでこういった発想がそこかしこにはびこっているのを見たことがないことを私は知っている:現在完了(you haven't) 知覚動詞+O+現在分詞(seen those ideas running) 25.See, when decadence steps up, romance and intellectual pursuit are the first things it pushes down, like when fascists or some other soul-destroying, totalitarian entity comes aroundほら、退廃が進行する時恋愛感情と知性の追及は退廃が押し出す最初の物事でそれはファシストやある種他の死ぬほど退屈な全体主義の存在が巡ってくる時の様だ:関係詞・省略(the first things [that] it pushes)  

 

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バラードを演奏するには、リズムセクションはゆったりとしたダンスのテンポを刻んでゆくことが必要だ。君はダンサーを立てての演奏経験は無かったね。となると、チークタイムとか、あるいは本当に音楽に合わせてダンサーが踊る時の「ゆったり」の加減がわからないかもしれないな。一通り身に付けて、いざ行ってみたら、スラムダンスがいい、などと言い出すことだってあるだろる。パンクロックのダンスを、といわれ、ジャズのミュージシャンである君はどうするか?バラードを演奏したいなら、従来の曲に新たな風を吹き込むか、それとも自分で新しく曲を作ってしまうか、いずれにせよ、退廃した世の中に在って、文化の中に息づくロマンチックな感情を復活させることからやらないとね。君が自分でやるんだ。そうでなければ、誰がやる?バラードに新たな風を吹き込み活力を与える。君がそこに価値を見いだせないなら、バラードのことは頭から捨ててしまえ。ロマンチックな感情を曲の表情とする。君がそこに価値を見いだせないなら、バラードを演奏する意味がない。だって、そんなことでは出てくる音も良い筈がないからだ。 

(語句と文法:数字は行数) 

7.Well, you've probably never played for dances, so how do you know how slow people need to dance when they're rubbing bellies, or if they'll even dance to it?さて君は多分人が踊るのに合わせて演奏したことはまだないから、人々が向かい合って踊る必要がある時に、あるいは、これから踊ろうとしている時にどの位ゆっくり踊らなくてはいけないかを君はどうやって知ることが出来るか?:現在完了(you've never played) 間接疑問文(how slow) 14.If you don't feel like it's worth revitalizing, don't even consider balladsもし君がバラードは新たな活力を与える価値があるという気分になれないならバラードのことは考えることすら止めろ:動名詞(worth revitalizing) 15.If you think the romantic feeling is not worth articulating, then ti doesn't make sense to play it, because you won't sound goodもし君がロマンチックな感情は表現をつけて演奏する価値がないと考えるならそれを演奏する意味がない、なぜなら君は上手に演奏できないだろうからだ:動名詞(worth articulating) 仮主語(it doesn't) 不定詞(to play) 

 

君が持つ全てのニュアンスや明暗付けを駆使して、バラードが生き生きするようなサウンドを創り出さないといけない。そもそも、あのゆったりとしたテンポのせいで、バラードの演奏は苦しいと思ってしまう。でも、そんな演奏は許されない。テンポやリズムも、表情も、技術的なものも、そういった意味では、バラードに限らず何でもそうだけれどね。君の見知らぬ人々の、心の空間へと、何かしら強い人間味のある感情を届ける為にも、心を開き、肩の力を抜いておかねばならない。 

(語句と文法:数字は行数) 

19.You've got to use all the nuance and shading of your tone to create sounds that make a ballad come alive君はバラードが生き生きとするようなサウンドを創るために君の音の全てのニュアンスと明暗付けを使わなければいけない:不定詞(to create) 関係詞(that) 使役動詞(make a ballad come alive) 23.You have to be open and loose enough to deliver the emotion of something intensely personal to a room of people you don't know君は君の知らない人々の心の隙間に強烈に個性的な何かの感情を届けるに十分心を開きリラックスしなければいけない:enough+不定詞(enough to deliver) 関係詞・省略(people [whom] you don't know) 

 

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何を、どうやって演奏しようか、と思案する時に、いつも心に留め置くべきことがある。優れたミュージシャン達の演奏を、これは自分できちんとやるべきことだ、と思いながら、よく耳を傾け、学び、自分のモノにしてゆくこと。単に耳から入ってくることを、そのまま真似するようなことをしてはいけない。ここまで偉大なアーティストから受け継いできたことの話をしてきたけれど、みんな、君が一人のジャズミュージシャンとなるために、知っておくべきことだ。例えば君と僕が医者だったとして、他の医師達も普段から一緒にいる中で、僕は君が医者としての技術を理解すべきかどうかについて、君と語り合い続けるなんてことは有り得ない話だ。また、例えばバスケのチームにいたなら…まぁ、その場合は、君は今の選手たちがやるように、基本練習に明け暮れなきゃならないだろうね。 

(語句と文法:数字は行数) 

1.Keep this in mind when you consider what and how to play君が何をどうやって演奏するか考える時にはこれを頭に入れておけ:疑問詞+不定詞(what and how to play) 2.It's your job to listen, learn, and appreciate, not to merely mimic what you've heard by great musicians単に偉大なミュージシャン達から聞いたことを真似するのではなく、よく聴き、学び、享受することは、君の仕事だ:仮主語(It's ) 不定詞(to listen) 関係詞(what) 現在完了(you've heard) 5.If you and I were doctors, hanging with some other doctors, I wouldn't be sitting up having a discussion with you about whether you should understand the craftもし君と私が医者で他の医師達も周りにいるなら私は君がその技術を理解すべきかどうか協議しようなどとは思わないだろう:仮定法過去(If you and I were wouldn't) 分詞構文(hanging)  

 

でも間違えてもらったら困ること、それは、基礎を身に付けることが一番大切なのであって、他人の演奏を何も考えず真似することが最優先事項ではない、ということだ。あのゴマンといる雑誌の批評家が、ミュージシャン達に伝えようとするクダラナイことを気にすると、どうしてもこういう間違えを起こしてしまう。基礎は必須、どんな芸術活動にも基礎がある。君が舞台に立って演奏する時、僕の興味は唯一つ。僕の聞いたことのないモノ、君だけのモノを聴くことだ。人の真似など聴く気もない。君は彼らほどの腕前はまだないのだから。君だけの表現の仕方で「なんじゃこりゃ?」と僕に言わせるような演奏を聴かせてほしい。それだけだ。 

(語句と文法:数字は行数) 

11.But don't be confused by the talk of fundamentals into thinking that your prime mission is to regurgitate information that you've heard alreadyしかし基本のことを聞いた挙句自分の最優先の課題は君が既に耳にした情報を理解しないで繰り返すことだと思い込んで混乱してはいけない:動名詞(thinking) 不定詞(to regurgitate) 関係詞(that) 現在完了(you've heard) 13.That's a typical confusion caused by the dumb stuff too many critics write in the magazines that inform musiciansそれはミュージシャン達に伝える雑誌の中であまりに多くの批評家達が書くくだらないことによって引き起こされる典型的な混乱だ:過去分詞(caused) 関係詞・省略(stuff [that] too many) 関係詞(that inform) 16.When you actually stand up and play, the only thing interesting for me is to listen to will be something I haven't heard, something particular to you君が実際舞台上で演奏する時、私が聴くことに興味を持つ唯一のものは私が耳にしたことのないもの、君特有のものだけだ:不定詞(to listen to) 関係詞・省略/現在完了(something [that] I haven't heard) 20.It's only interesting to hear you play something that makes me say, “Have mercy! What was that?” because of your unique articulation君独特の表情つけのおかげで「何てこったい、何だったんだこれは」と私に言わせる何かを君が演奏するのを耳にすることだけが興味をそそる:仮主語(It's) 不定詞/知覚動詞+O+原型不定詞(to hear you play) 関係詞/使役動詞+O+原型不定詞(something that makes me say) 

 

そしてこれこそが、ジャズの演奏を難しくしている原因なんだ。今在る物に変化をつけることは難しいことだ。例えば、普段の僕と君との接し方がある。それがある日君が僕の処へ来て、僕の肩に手をポンと置く、なんて、一度もしたことがないことを君が突如したとしよう。そして君がこんなことを言う「おい、チョット話があるんだけどよ」あっという間に僕の注意力は根底からひっくり返されてしまう。僕のリアクションは「何でそんなことするの?そんなこと今まで一度もしたことないのに、力関係をひっくり返したか?」とまぁ、これがジャズで君がすべきことだ。君のやり方に、お客をついてこさせないといけない。一番上手なやり方は、演奏する方も聴く方も、「やってみたらいいんじゃないか、と思うけれど、やる勇気が無くて誰もやってない」ことを、やって見せることだ。 

(語句と文法:数字は行数) 

24.And that's what makes jazz so hard to playそしてそれがジャズを演奏するのが難しくしているものだ:関係詞/make+O+C(what makes jazz so hard) 不定詞(to play) 24.It's difficult to change the status quo現状を変えることは難しい:仮主語(It's) 不定詞(to change) [p.54,5]Because you've never done it before, you've altered the dynamic of our relationship君がそれまでしたことが無かったので君は私達の関係の上下の在り方を変えてしまった:現在完了(you've done altered) 9.And the best way to do that is to reveal something y'all both understand to be true but never heard uttered out loud, because nobody had the courage to say itそしてそれをする最高の方法は正しいけれどだれもそれをする勇気がなかったという理由で実際に発せられたのが耳にされていないと君達全員が理解していることをお披露目することだ:不定詞(to do to reveal to say) 関係詞・省略(something [that] y'all both) 知覚動詞+O+過去分詞(heard uttered) 

 

さて、ここいらで止めておくよ。ペンを握り続けて指が死にそうに痛い。それと皆がサンドイッチを食べていて、ブッシュ大統領とその側近達のことで喧々諤々やっているよ。早めに返事を待っている。今日の内容を君がどう理解したか、教えてくれ。誰かをつかまえて、ツナサンドを持ってこさせなきゃ。あとアンソニー、最後にもう一つ。ジャズの演奏を諦めるなよ。絶対に。文字通り、君の演奏を諦めるな。ステージに上がったら、自分の演奏は自分ではわからない。自分ではひどい演奏だと思っても、実際は最高のパフォーマンスができているかもしれない。だから、君の演奏を諦めるな、と言っている。そしていつも心に抱いていてほしい。レスター・ヤングの言葉「ブルースを演奏できないようでは、何も演奏できない。」 

歌い続けなさい。 

(語句と文法:数字は行数) 

14.Write back soon, and let me know how this stuff grabs you速めに返事しろ、そしてこのことがどのように君を掴んだか私に知らせろ:使役動詞+O+原型不定詞(let me know) 関係詞(how) 18.Because when you're up there, you don't know what your playing sounds likeなぜなら君がそこに上がっているときは君の演奏がどのように聞こえるかは君はわからないからだ:疑問詞節(what)  

<訳注> 

You have to think like the blues. Yes, things may be bad, but they're gonna get better. 

(from “Marsalis on Music”) 

 

次回 第9回は、 5.自分の立ち位置に対する思い上がり」 (2003年8月2日) の前半を見てゆきます。