【英日対訳】ミュージシャン達の言葉what's in their mind

ミュージシャン達の言葉、書いたものを英日対訳で読んでゆきます。

「To a Young Jazz Musician」を読む  第13回

「To a Young Jazz Musician」を読む 

13回:大草原に独り立つ男 2003年9月22日  

 

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親愛なるアンソニー 

 

君は僕のことを、頑固者だとか何だとか思っていることだろう。今夜、まだ早めの時刻に、ツアーバスのフロントラウンジに座っていたけれど、大半の連中は、ずっと眠ってしまっていた。こいつら、ちなみに、ツアーを終えて戻る時の寝ている間のイビキのかき方は、今とはまた違うんだ。僕はと言うと、来月の本番で演奏する曲を書き終えなきゃ、と思っていたんだけれど、何か気付いたら、ここ数か月のツアーのことや、君との間でやり取りした手紙のことを考え込んでいたよ。これまで君には、白黒ハッキリとした僕の考えを、次から次へと投げかけてきたけれど、その理由をちゃんと説明できているだろうか、と心配になってきている。頭が疲れている時に書いた手紙もあるだろうし、もしかして君が手紙を目にした時間が十分心地よくて、君が辛くて逃げていたかもしれないことを思い返すことも苦にならなかっただろうか。そう考えると、こういうことは、時には何度も繰り返し話した方がいい、ということになる。何せ君と僕は、このジャズを極める道を歩んでいるのだから。な?アンソニー。そしてこの特別なハイウェイは、希望や信念と言ったもので境界線が成されている、寂しいモノだ。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

5.Thought I would get writing done on some music we need to play next month私が考えたのは来月私達が演奏する必要があるある曲の作曲を終わらせなければということだった:get+O+過去分詞(get writing done) 関係詞・省略(music [that] we need) 不定詞(to play) 11.Maybe it's the hour, the moment when you feel comfortable enough to reflect upon the things you might even be running from多分、君が手紙を読んだのは君が逃げ出しているかもしれないことについて思い返すことができるくらい十分心地よく感じている瞬間だ:同格(the hour, the moment) 関係詞(when) ~enough +不定詞(comfortable enough to reflect) 関係詞・省略(things [that] you) 仮定法過去(you might) 

 

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人々の間で何が起きてきたか、思いめぐらせたことは無いか?僕と君、それぞれの世代間、黒人と白人、アメリカ全体の中、といった具合に。僕達アメリカ人が、もし過去において、僕達の土台となるモノの、もっとしっかりとした部分を強化していたならば、今頃どんな世の中になっていただろう。そう考えたことは無いか?僕達の国の最低の部分を良しとせず、最高の部分を誇る。そういう神話を皆で共有し受け継いで行っているなら、今頃どんな世の中になっているだろう?集団心理に潜む、心の絆に生じる亀裂を悪用せず、共に歩んでゆくことを讃える。そういう全てのアメリカ人が共有したくなるような物語が、もしもあるのなら、どうなっているだろう?アメリカは、黒人を奴隷とする奴隷制を擁して国を立ち上げたかもしれないけれど、やがて誰もが奴隷に身をやつすことがある、と言う考え方になる。社会全体が、誰かの人質、と言う感じだ。風に揺れている奇妙な果実、なんてよく言うけれど、奴隷にする方もされる方も、辛い制度だ。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

9.What if we as Americans had a mythology that celebrated the best of our country instead of the worst?もし私達がアメリカ人として我が国の最悪の物ではなく最高のものを祝福する神話を持っていたらどうなっていただろう:仮定法過去(What if we had) 関係詞(that)  

 

別の話をしよう。普通こんなことを言う人はいないだろう「さて、このパイを食べたから、もっと、あと500枚食べさせろ。そしたら肥満になり放題だ!」とんでもないよね。次の日、朝起きたら運動しないと。でも実は、何年もそんなような食生活のパターンに、知らないうちにハマっていて、何年も経ったところで気付いて、ようやく改める、なんて良くある話だ。真剣な取り組みが実は実行できていないということだろうね。その割には、「改めなきゃ」という思いだけは持っている。その思いが、アメリカ中で金儲けの餌にされているんだ。これを手に入れましょう!あれを買いましょう!あなたを磨き上げましょう!ただ、何故か、こういう考え方は文化のこととなると、僕達の認識の中から落ちてしまう。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

18.Well, I ate this pie, so let me go ahead and eat five hundred piesさて私はこのパイを食べだから、もっと先へ進み500枚のパイを食べさせろ:使役動詞+O+原型不定詞(let me go) 19.You're going to get up the next day and try to exercise; but you might be locked in that pattern of eating for years before you change it君は次の日に起きて体操をしようとするが、君はおそらく何年間もその食べるパターンにはめられてようやくそれを変えることになるかもしれない:予定(are going to get) 不定詞(to exercise) 仮定法過去(might be) 動名詞(eating)  

 

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 アメリカ人はまるで、文化の地下室に籠って、そこで若い子達に、これでもか!と言うくらい、酷いことを吹き込んでいるみたいだ。女の子達には「できるだけ素肌を露出するのが最先端だ」と言い、男の子達には「世間はみんなナンパしているよ。だから君も彼女を創らないと」と言う。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

3.We seem locked in our cultual basement, where we teach our young the most unthinkably dumb shit私達は私達の文化の地下室に閉じ込められているように見えてそこで私達は私達の若い人達に最も考えにくいくらい酷いことを教えている:関係詞・非制限用法(basement, where)  

 

芸術は人が頭の中で考えていることを、形のあるモノにしてくれる。嘘八百をさせてくれもするし、逆にさせないようにもしてくれる。時には、世間の人々がしていることに、君も付き合う立場に居たりして、そういう場合、皆がグルーヴしている感じだ。別の場面では、君は悪を告発する立場になり、この場合君は、他の連中にとっては「目の上のタンコブ」ってやつだ。でもその連中、つまり皆で同調(=グルーヴ)している方が、告発者である君より楽しい思いをしているように見えるんだろうな。数で上回っているだけにね。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

9.At times you're in the position where you go along with what everyone's doing, and it's a groove for all時には君は皆がしていることつき合う立場にありそしてそれは皆にとってはグルーヴだ:関係詞(where) 前置詞+関係詞(with what) 

 

多分僕は、文化と言う面では世間の人々にとって目の上のタンコブってやつなんだろう。僕だって好き好んでのことじゃない。ある特定の物の見方ばかりしていると、世間の、風通の物の見方をするのが、怖くてできなくなってしまう。昔、1970年代頃の自分の演奏ののヒドさ加減を後悔したことを、今でも覚えている。僕はその時思ったことを、高校を卒業する時のイヤーブック(卒業文集・写真集)に書き記した。分かってはいたけれど、つい楽しんでしまった。当時は演奏に対する態度が、なっていなかったと思う。でも当時でさえ、そういう堕落した演奏が人々に与えてしまう影響、つまり、規範と言うものが徐々に崩壊していってしまうという事態が起こる、ということは、見えていた。僕はそんなことを13歳の頃からずっとやっていた。分かってはいたけれど、それでも、楽しいという気持ちが上回っていた。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

19.But even then I had fun doing it, too私はそれをして楽しんだ:分詞構文(doing) 22.I could see what that degradation did to people, the ramifications of the gradual dissolution of standardsしかし当時でさえ私はその堕落、つまり規範が徐々に崩壊してゆくことの結果が人々に何をしたかが見ることができた:関係詞(what) 

 

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今41歳になって、10代の子達と話をしていると、「与えてしまう影響」というやつが、とても鮮明に見える。破綻は必然的にどこかで始まる。人前でやぶれたズボンを穿いてみたり、男の股間をさらけ出してみたり、なんていうのを、誰もが見ることができてしまう世の中だ。想像力をフル回転してみたところで、目を背けることもできない。物事は本当は、もっと全然違う方向へ進んでゆくはずだったと思うよ。僕がこんなことを言うと、君は、僕が嘆いて感傷に浸っている、と思うかもしれない。でも僕は本気でそう確信している。物事は、もっと違う方向へ向かうはずだったと。違う方向、と言っても、規則や束縛、あるいは厳格さということじゃない。夢を諦めたり、流行に触れる自由を我慢したり、そんなことも言ってない。ちなみにもっと言いたいことがあるけどね。ただ、そういったことには、心無い連中がつけ込んだり、低俗化させたりする必要はなかったんだ。暴行、憎悪、暴力、そして低俗と言った道を行く羽目に陥る必要だって、無かったと思うよ。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

6.Things could have turned a whole other way物事は完全に他の方向へ行けたはずだった:仮定法過去完了(could have turned)  

 

でも勘違いしないでほしい。君の様な若い人達のおかげで、僕は希望が持てている。歴史の浅い我が国が、どこへ向かっているかを評価する時に、世間の人々が語り、あるいは勝手に想像する若者の姿、君がそれに当てはまらずに済んでいるのは、本当に、何故なんだろうね。勿論、君には生まれた時から言葉を交わしている人から、ちゃんとした指導を受けている、というのがあることは、分かっている。僕は父親と言う点では、恵まれていた。常に僕には、分別を教えてくれていたからね。君も分別はわきまえている子だ。君はそれを教えてくれた人がいる。僕からのそれを言われるのを待っている必要なんかない。世間がどう思おうと、僕は気にしない。君のように若い子を沢山見てきている。それもあらゆるタイプのね。となると、世間があれこれと「黒人がやらかしそうなことだ」と言い出すと、途端に、お父さん方や何らかの目に見える形の指導がついている子供さえも、問題視される。そのキッカケは、どこにあるんだろう?という話になる。「やらかしそうなこと」に集まる注目の全てが、それ自体を更に増長させてゆく。ここがポイントだと思うよ。黒人アーティストというものは、唯一、その品格は「やらかしそうなこと」によって評価されてしまう存在だ。他のアーティスト達は、彼らのアイデアの持つ力で、きちんと評価を受けている。僕達なんかだと、「ちゃんと生きている?」とか聞かれたりする。地球上のモノなんだから、ちゃんと生きていて当然だろ?!と言いたい。自分達以外の人達が絡んでくると、こんなことを聞かれたりもする「お父さんとお母さん、ちゃんと二人揃っている?」「麻薬でラリったことある?」「人を射殺しちゃったことある?」こんな「やらかしそうなこと」に、何かしら苦しみもがいている僕達の仲間(訳注:黒人)を思い浮かべるたびに、気分良くしているアメリカ人は、人種に関係なく、やたらと多い。そんなことに縁のない仲間、人に迷惑を掛けまいとする仲間、ナンパなんかしない仲間、そちらが現実なんだ、と証明しなくちゃね。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

17.Man, I know you got guidance; you got someone you been talking to since you were bornおい、私は君が指導を受けていることを知っている。君は君が生まれた時から君が言葉を交わす人を得ている:関係詞・省略(someone [that] you] 現在完了進行形(you [have] been talking)  

 

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今、このツアーバスには、若手のプレーヤー達が同乗している。その中の一人のクウェームという子がいて、ずっと譜読みをしたり、勉強しているよ。僕の記憶だと、彼のお母さんはクウェームを頻繁にコンサートに連れて行ったり、昼夜問わずレッスンも受けさせていたね。となると、クウェームは「やらかしそうな」人間じゃないから、僕達の仲間じゃないということなのか?一日中、誰かが、やれ銃撃だ、やれ強盗だ、と、お決まりのように耳に入ってくる。黒人なんてそんなものか?菊たくなくても耳にはいってくるさ、なにせ、メディアなんてどこも生活をかけて、こんな戯言を悪用して電波でまき散らしているんだから。でも、だったらクウェーム達の演奏を聞いてほしい。彼は、例の誹謗中傷されているような黒人の一味と見なされていないか?彼は今夜だってステージに上がっている。彼のピアノの演奏はマボロシ?ピアニストとして見なされていないのか? 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

18.You got little choice about hearing it, with all the media organs living to exploit that crap over the airwaves君は逸れを聴くかどうかについて選択する余地はほとんどない。あらゆるメディア機関が電波に乗せてその戯言を悪用するのために生活している状況では:動名詞(hearing) 分詞構文(living) 不定詞(to exploit)  

 

僕はいつも、子供達に話しかけ、ボール遊びもするし、学校に通っている所を見かけることもある。そう、いつだって僕は彼らに寄り添い、つながりを断ち切らない。僕が言うのは、皆、きつい目つきで不機嫌そうな表情をしなくてもいいよ。僕の方から証明して見せるものなど、何もない。君達の方から示してく。僕の方は、もうわかっていることだから。そして、こんな生活のせいで何もかも台無しだ、と実感して感じるとしても、それがなんだ!不運かもしれないけれど、他人の生活を台無しにしていいはずがない!自分に起きたことは他人には関係ない。黒人の大衆文化に悪影響を及ぼすような、黒人社会に植え付けられているマイナスイメージのことで頭をいっぱいにして悩んでいるなんて、そんなの、自分から奴隷になりに行って、自分は大農場で働かされていました、と、わざわざ証明しよとしているようなものだ。みんな、そんな監獄みたいな場所から飛び出して、仕事を探すにしろ教育の機会を得るにしろ、公平な競争をしないと!そして絵を描くにせよ楽器を弾くにせよ、その取り組みを表現するには、一番キチンとした言い方をすること。全く品の無い言葉は使わない。現実にありえないマイナスイメージの黒人像などではなく、実際にこの世に存在する生身の人間であることを示すこと。君は公衆便所(訳注:要らぬそしりを受ける存在)でもなければ、今の時代にのさばっている人さらいの餌食(訳注:他人に自由を奪われる存在)でもないのだから。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

9.So the obsession with realness and ghetto authenticity that has a vise grip on black popular culture - that's like volunteer slavery, trying to prove you really did come from the plantationだから、黒人の大衆文化に邪悪な制御を持ついかにも本当なように見えるマイナスの現実性に取りつかれること-それは奴隷志願者が自分は確かに奴隷農場出身だと証明しようとしているようなものだ:関係詞(that) 分詞構文(trying) 不定詞(to prove) 強調(did come)  

 

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いいかい、僕は僕でしかない。僕は誰とでも分け隔てなく話す。仲間達とは、自分達の言葉で話すし、バカなことを言い散らかしたり、やり散らかしたりする古いタイプのペテン師に成り下がったりもしない。今までの処、僕の話し方は、少し下品だ、ということには気付いているだろう。でも時と場合によっては、言葉を選び、行儀よくする。何しろ、自分達の本当の有様を語ろうとするのだからね。どんな場へも出て行って語るつもりだ。ここは行かない、なんて場所は無い。黒人はメディアでしか見たことがないから、目の当たりにするのは怖い、と思っている人達がいる。でも僕は別に怖くなんかないよね?僕は愛国者ですから。都会でも郊外でも、人を指導し引っ張ってゆく人が必要なんだ。アメリカ全土で、僕が話をしてきたグループでは、そういう人の存在に飢えている。若い人達は本当に死ぬ程必要としている。彼らが求めている人物は、愛情あふれる眼差しで、「君はこれに取り組まなければいけない。私が手助けするよ」と言ってくれる人だ。黒人でなくてもいいんだけれどね。実際、大概そうではないしね。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

[p.105,6]This is what you need to be doing and let me helpこれは君がする必要があることで私に手伝わせてくれ:関係詞(what) 不定詞(to be) 使役動詞+O+原型不定詞(let me help) 

 

(105ページ) 

 

僕は可能な限り、音楽教室を開いたり教育プログラムを実施したりしている。「雨垂れ石を穿って」という気分だけれどね。その意義を分かってほしいんだ。負けると分かっているケンカに挑むようなものかな。尻尾を巻いて逃げるのとは、全く違う感覚を、勇敢に戦って負けた後に感じることになるだろう。君はきっと立ち上がって「大丈夫、僕は頑張った」と言えると思うよ。小さな一つ一つの「雨垂れ」が、役に立ってくるし意味を持ってくる。「物事は本当はこうだぞ」という大きな怪物が、君に対して「僕は神様にケンカを売ってしまっているのか??」と思わせようと、揺さぶりをかけてくるのが現実だ。仮にそうだとしても、君の一つ一つの行いは、意味があるんだということは、信じて欲しい。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

14.Every gesture has meaning, despite the fact that the great “how things really are” tries to make you feel as though you're spitting into the wind偉大な「物事は本当はこのようである」ということが君に対してあたかも君が天に向かってつばを吐いているように感じさせてるという事実があるにせよ、一つ一つの振る舞いは意味を持っている:関係詞(how) 不定詞/使役動詞+O+原型不定詞(tries to make you feel) 仮定法・反実仮想(as though) 

 

スタンレー・クラウチと僕とで、1980年代初頭の言い回しで「大草原の孤高のガンマン」というのを話した。このガンマンは、ある意味、鋭いモノの見方をする変人で、大草原でショットガンを持ち、守り切れるはずのないモノを守ろうとしている。自分でもどうしようもない、と言う自覚はあるけれど、馬にまたがり、あのモンタナ州の大空に向かってそびえたっているわけだ。人々が集まってきて、雨の中にたたずむ彼のことを笑う。 

「旦那、何してるんですかい?」 

「これを守っているのさ」 

「守るって、何ですかい?」 

「これ全部さ。君達が見えているモノ全部だよ」 

これがその男。孤高の彼は、大草原でショットガンを手にしている。軽薄な人達にはウザい存在だろう。誰を責めるでもない、誰を捕まえてしょっ引くでもない、守るべきと思っているモノを守っているだけ(と言ってもモンタナ州の大草原全体なんて、デカすぎるだろう)。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

23.People come out to laugh at him sitting there in the rain人々は雨の中で馬にまたがって座っている彼を笑うために出てきている:不定詞(to laugh) 現在分詞(sitting) 

 

(106ページ) 

 

とにかく、今の文化はヘドロの様なものだ。その中を僕達はのたうち回っている。どこに諸悪の根源があるかなんて、大差のない話だ。多少気にはなるけれど、大したことは無い。大事なことは、このヘドロを、どうやってキレイにするかだ。同じことの繰り返しは、あってはならない。「犯人を捜しあてて、再発防止だ」なんて言っている場合じゃない。どのみち、同じ様には事態は発生しない。僕にも、こうなってしまった経緯は掴めないことがある。時々考えるのは、これはアメリカ文化の様々な変化が組み合わさったことが原因ではないか、ということだ。宗教への思いの希薄化、ケネディ大統領やキング牧師のような大人物の死、世代間ギャップのコンセプトについての人々の説明の仕方、そして年齢が上の人達は若い世代を焚き付けて、彼らと彼らの持つ性的なことへの関心につけ込んでいる。その結果、男女関係の在り方としての恋愛に対して、誠実さがなくなってしまっているんだ 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

12.You can't say, “Well, we need to figure out who did this so it won't happen again”さて私達は誰がそれをしたのか解明する必要がある、そうすればそれは二度と起きないだろう」と言ってはならない:不定詞(to figure) 疑問詞節(who)  

 

アンソニー、僕達は治療してくれる人が必要だ。こんなことを言うと君はこう思うだろう「ウィントン、分かりますが、僕はまだ修行中の身ですから(訳注:そんな大それたことを出来る身分ではない)・・・」数週間前に僕達がこのツアーに出発する時に、君に僕が言ったことを覚えているかい?音楽と人生について話さなくちゃ。だって結局は、この二つは一体だからね。考えてみて欲しい。僕の言ったこと、そして君が質問したこと、情報を吟味すること、自分自身をモニター出来るようになることまで。そう、これら全て、アンソニー、これら全ては、君が文化をどう治療してゆくか、に回帰する。患者さんは一人ずつ診てゆこう。まずは君自身から。アンソニー、君が守るべき大草原は、だだっ広いなんてことは有り得ないが、いく分か、不動産価値のある土地を自分のモノにしてしまえ。そしてそれを担保にすれば、狩りに行くための銃弾は十分確保できるだろう。ニューヨークに戻ったらまた会おう。 

 

さよなら三角、また来て四角(ドラム奏者のハーリン・ライリーが、いつもこう言っている)。 

 

(語句・文法の要点:数字は行数) 

[p.107,2]Think of all that I've said and all that you've asked私が言ったことと君が訊ねたことについて全部考えなさい:関係詞(that) 現在完了1(I've said you've asked)  

 

 

第14回は、10.喜びに心は踊る (2003年9月28日) を見てゆきます。