【英日対訳】ミュージシャン達の言葉what's in their mind

ミュージシャン達の言葉、書いたものを英日対訳で読んでゆきます。

英日対訳:ブシュラ・エル・ターク(英・作曲)2022 歌劇「0度の女:死刑囚フィルダス」について

https://www.youtube.com/watch?v=-i8LCs49BM8 

スクリプトの動画はこちらからどうぞ 

 

Bushra El-Turk 

on “Woman at Point Zero” 

Aix Festival 2022/1 

 

Bushra El-Turk 

ブシュラ・エル・ターク 

 

The story of “Woman at Point Zero” is, I mean, written by the writer, psychiatrist, and former Health Minister Nawal El Saadawi. 

今回の歌劇「0度の女:死刑囚フィルダス」ですが、この元となった本を書いたのは、ナワル・エル・サーダウィといって、作家であり精神医学者でもあり、生前はエジプト政府の保健省でも重責を担った方です。 

 

It was written in 1975, and it’s about a prostitute called Firdaus, orginally ... in the original book, who’s on death row, and she’s telling her story about what it means to be free in a patriarchal society. 

この本が書かれたのは1975年、主人公は娼婦のフィルダスといって、元々…原作では死の床に臥せていて、男性が家庭親族の上に立つという「家父長制度」の社会の中で、自由とはいったいどういう意味を持つのか、ということを、いまわの際に語るというものです。 

 

It’s a fierce and fiery feminist project. We have four women in the creative team and that expands into the rest of the team, although, you know, it’s a mixture. 

強い考えと行動、それに火を噴くような思いをこめた、女性の権利について考えるプロジェクトです。創造性豊かなチームの中に4人の女性がいて、その気概がチーム全体に広がった、といっても、メンバーの性別は女性だけではありませんけどね。 

 

I think it’s very important in the writing and in the music that you try to hold ... in this case, women on the same level as others, without trying to other them. And in the music I do that.  

この作品は、ストーリーを書いたり音楽を作ったりする際に…この場合、女性をですね、他の性別と同じ土俵に立たせようとすることが、非常にだ時だと、私は思っています。それも、女性だけを異質なものとして扱わないように心掛けながらですね。私はそれを、音楽作りで実践しました。 

 

In my case, I'm very ... I strongly feel about the importance of working with creative artists, and the personalities behind the voices and behind the musicians that end up blurring the boundaries between notation and improvisation, and in that way I give them freedom and I try not to suffocate them. 

私の場合非常に…私が強く感じたのは、0から物事を創るという、気概と能力のあるアーティスト達であるとか、楽器や歌声とそれらを発信するミュージシャン達の個性や人となりであるとか、そういうものとしっかり離れずに取り組んでゆくことの重要性、そしてそれがひいては、私が譜面に書いたことと、ミュージシャン達がインプロビゼーションしたことと、その境目を分からなくすることになってゆく、ということです。そのために私は、楽器にしろ歌声にしろ、それらを発信するミュージシャン達にしろ、完全に好きにしてもらって、私が抑え込まないよう心がけました。 

 

And I put them on the same platform and an equal platform with other people on stage. 

そして演奏者と、舞台上にいる他の人達と、同じプラットフォーム、平等なプラットフォームに立たせたのです。 

 

Let me tell you a bit about the score.  

「譜面に書いたこと」について、少しお話ししましょう。 

 

We have two fantastic, mesmerising singers: Nai Barghouti, who has this... originally, that Arabic traditional style, but she crosses over to the Jazz style as well. And we have Dima Orsho, who has the operatic style, but she crosses over to the Arabic and to the Jazz as well. 

歌手が2人、2人とも何でも素晴らしくこなせて、しかも魅力的な歌を聞かせてくれます。まずナイ・バルグーティですが、彼女はですね…元々はアラブの伝統音楽のスタイルが土台になっていますが、現在はジャズのスタイルも取り入れています。それからディマ・オルショですが、彼女はオペラのスタイルが土台ですが、現在はアラブ音楽やジャズも取り入れています。 

 

And Dima Orsho plays Fatma, who’s originally Firdaus, and Nai Barghouti plays Sama, who’s the documentary filmmaker in this opera, but who was the interviewer in the actual book. 

ディマ・オルショがファトマ、原作のフィルダス、そしてナイ・バルグーティがサマ、この歌劇では映画監督の役ですが、原作の設定で(精神科医が)聞き取り調査をするのですが、その役割を果たします。 

 

Ensemble Zar, for this project will be ... contain six instruments, or six people behind the instruments. 

今回の企画のために編成されたのが「アンサンブルZar」です。6つの楽器、といいますか、6人の奏者が様々な楽器を演奏します。 

 

We have the Persian kamancheh and ghaychak, and we have the Japanese shō, and the Korean taegum, and the cello and the accordion, and the Slovakian fujara player who also plays recorders and duduk and so many other interesting instruments that you will probably learn about on the day. 

まずはペルシャ音楽で使われます擦弦楽器の、カマンチェとガイチャック、次に日本音楽で使われますリード楽器の、笙、朝鮮音楽で使われます横笛の、大琴(テグム)、それからチェロとアコーディオン、あとスロヴァキア音楽で使われます縦笛の、フヤラ。このフヤラを担当する奏者がリコーダー各種、それにアルメニア音楽で使われますリード楽器の、ドゥドゥクなど、他にもかなり多くの興味深い楽器が出てきます。それは舞台をご覧になってのお楽しみということで。 

 

So what’s exciting for all of us is that you have the documentary blurring with whatever happens on stage. You have the notation and the improvisation, and obviously the so-called East meeting the so-called West. 

それで、私達演ずる側もそうですが、ご覧になる方達と、全員にとって大いに楽しみたいのが、舞台上では「ドキュメンタリー」として演じられているわけですが、舞台上で起きていることが、演技と現実と境目がわからなくなってくるところです。譜面に書いたこととインプロビゼーション、それに先程のお話の通り、いわゆる「洋の東西の出会い」というやつです。 

 

And what you’ll find is that the documentary will be interacting musically through the rhythms and the melodies and the harmonies within the musical textures, and as a kind of stimulus for the rhythms that are happening in the opera. 

そしてご覧になる皆様には、この「ドキュメンタリー」がですね、刻まれるリズム・流れるメロディ・響くハーモニーを通して、音楽という枠組みを用いて、舞台とのやり取りがなされるということに、気付いて頂けると思います。そしてそれは、この歌劇の中で刻み続けられているリズムにとっては、ある意味、これを盛り上げる燃料みたいなものなのです。 

 

 

https://vimeo.com/230301082 

 

WOMAN AT POINT ZERO An opera inspired by Nawal el Saadawi's seminal novel. Work-in-Progress Performance at LSO St Luke's, London in 2017.