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2020/06/12
In this new series by the Vienna Philharmonic, members of the orchestra guide the audience through orchestra life. Clarinettist Daniel Ottensamer will be introducing this week's special guest: Anneleen Lenaerts, Principal Harpist of the Vienna Philharmonic.
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によるこの新しいシリーズでは、楽団員達が皆様を、オーケストラでの日々はどのようなものか、ご案内いたします。クラリネット奏者のダニエル・オッテンザマーが今週の特別ゲストをご紹介いたします。ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団主席ハープ奏者の、アンネレーン・レナエルツです。
Daniel Ottensamer
Welcome to IDAGIO Live! As always, I greet you from the offices of the Vienna Philharmonic in the Vienna Musikverein. My name is Daniel Ottensamer and my guest today is our principal harpist, Anneleen Lenaerts. Anneleen, nice to have you here today. I am glad to see you.
ダニエル・オッテンザマー
皆様、アイダージョ・ライブへようこそ。ダニエル・オッテンザマーです。今日もウィーン・ムジークフェラインの中にあります、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の事務所からお送りいたします。そして今日お迎えしているゲストは、当団の主席ハープ奏者であります、アンネレーン・レナエルツさんです。アンネレーンさん、今日はようこそいらっしゃいました。よろしくお願いします。
Anneleen Lenaerts
Good to see you.
アンネレーン・レナエルツ
よろしくお願いします。
DO
It has been quite a while.
ダニエル・オッテンザマー
こんな風に顔を合わせるのは、しばらくぶりですよね。
AL
It really has been a quite while.
アンネレーン・レナエルツ
本当に、そうですよね。
DO
All the better that we have this opportunity.
ダニエル・オッテンザマー
とにかく、今日こうして会えたのは、良かったですよ。
AL
All the better, yes.
アンネレーン・レナエルツ
そうですよね。
DO
Usually we hear each other playing a lot, but don't have too much chance to talk.
ダニエル・オッテンザマー
普段僕達は、演奏中お互いの音は、しょっちゅう聞きあってはいるのですが、話をするっていうのは、そんなにはありません。
AL
That's right.
アンネレーン・レナエルツ
そうなんです。
DO
Now, we can do that. You are from Belgium. My first question is, what was it like for you to join the Vienna Philharmonic? How have you managed living with the Viennese mentality? Has that been difficult? Since I grew up in Vienna myself, it is hard for me to judge.
ダニエル・オッテンザマー
今日はその辺、たっぷりとね。アンネレーンさんは、ベルギーの出身です。さて、最初の質問ですが、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団に入団なさった当初は、どんな気分でしたか?ウィーンでの暮らしには、気分的にどのように馴染んでいったのですか?大変だったりしませんでしたか?僕自身はウィーンの出身なので、ピンとこないところですが。
AL
Yes, it all developed naturally. At the beginning, I played an audition with a hope of winning this great position, which did happen.
アンネレーン・レナエルツ
そうですね、なんか自然に色々進んでいった、てところですかね。最初、オーディションを受けた時は、こんな凄いポジションだけれど、なんとか残りたいと思っていましたが、夢が叶いました。
In the first year, I didn't think about much else except passing the probationary year.
最初の1年は、試用期間を無事に過ごそうと思う以外は、あまり色々考えなかったですね。
Then, in the second year, I suddenly had the realization that, now having passed the probationary year, I am here in Vienna and I need to build a life for myself.
2年目に入って、試用期間を無事に終えた時、ふと突然思ったのが、自分がウィーンで暮らすことになったんだ、生活を作っていかなきゃ、てことでしたね。
Previously I hadn't had anything to do with Vienna. The language was new. I spoke no German when I came here. I still sound a bit half-Flemish ...
それまでウィーンとは、何のご縁もなくて、言葉も、私ここへ来た時は、ドイツ語が全く話せなかったんです。もっとも今だに半分、故郷ベルギーのフラマン語が、訛っていますけどね。
DO
It is very charming and suits you well.
ダニエル・オッテンザマー
それが結構可愛くて、あなたに合ってるんですよ。
AL
Everything was new. We all know that the repertoire is difficult. In the first year, you have to learn a lot.
アンネレーン・レナエルツ
とにかく何もかもが初めてのことで、団のレパートリーは難曲揃いですし、最初の1年間は、勉強しないといけないことが沢山ありました。
DO
So you couldn't really focus on the city.
ダニエル・オッテンザマー
それじゃあ、街の暮らしといっても、あまり目が向かなかったでしょう。
AL
Yes, but also the social aspect. I have no complaints because all of the colleagues were extremely nice and accepted me completely. My colleague, Charlotte, as well. That was not the problem, but you simply need time to feel fully at home and develop friendships that do not cost energy but provide energy.
アンネレーン・レナエルツ
そうなんですよ。それだけじゃなくて、世間の様子にも目が向かなかったですよね。不平不満は全く無いです。とにかく団員さん達がみんな優しくて、私をしっかりと受け入れてくれましたからね。同じパートのシャルロッテ・バルツレライトも、良くしてくれています。そこは、全然大丈夫。単に、落ち着くのに時間がかかって、人間関係を作っていくのにも、気を遣うのではなくて、お互い元気を分かち合う、ていうところまで持っていくのには、時間がかかりましたよね。
Therefore, everything together, the new job, the new colleagues, the new language - took a while. Although I am certainly not complaining, not I feel very comfortable, after 10 years, it is time.
そういうわけなので、とにかく何でも、新しい仕事、新しい仲間、初めてのドイツ語、時間はかかりました。不満は全くありません。あれから10年経ちましたけれど、完全に馴染んだ、というところには、もう少しですね。
DO
It is time that you feel comfortable here. But are you able to view Vienna as your home?
ダニエル・オッテンザマー
今はもう大丈夫でしょう。でも、もうウィーンが自分の本拠地、と思えるんじゃありませんか?
AL
By all means. Now I am always happy when I come back to Vienna. It is my home.
アンネレーン・レナエルツ
それはもう、間違いないです。今はウィーンに戻ってくれば、ホッとする、完全にここが本拠地ですよ。
DO
Whenever I meet someone who plays the harp, I am interested to hear how the person arrived at this instrument.
ダニエル・オッテンザマー
僕はハープ奏者の方達にお会いすると、いつも聞いてみたいと思うのが、ハープをおやりになるようになった経緯なんです。
AL
What we do?
アンネレーン・レナエルツ
私達が普段やっていることかしら?
DO
Yes, what you do in the orchestra, of course. But in general, I wonder why you choose this instrument. This is perhaps a silly question, but did you consider how difficult it is to transport the instrument? And how are you going to get it from one place to the next?
ダニエル・オッテンザマー
そう、合奏中のことも勿論なんですが、もっと全体的なことで、この楽器を選んだ理由とかですね。アホな質問かもしれないのですが、持ち運びが大変だとか、思わなかったのかなあ、とか。それと、普段楽器の運搬は、どうしているのかなあ、とかですね。
AL
Do you perhaps know how much a harp weighs?
アンネレーン・レナエルツ
ハープ、てどのくらいの重さか、知っていますか?
DO
Tell me.
ダニエル・オッテンザマー
教えて。
AL
That is the first question I hear after a concert. I play an hour-long recital and people ask how much an instrument costs, and how much it weighs.
アンネレーン・レナエルツ
普段本番が終わって、インタビューとかで最初に聞かれるのが、それなんですよね。リサイタルが、1時間ぐらいなんですけど、まず皆さん、楽器の値段と、重さを質問なさいます。
But it is a legitimate question. There are colleagues who constantly make jokes, saying they should have learned the harp because often there is less to play than on other instruments.
まあ、そりゃ訊きたくもなりますよね。楽団員の中には、ハープは比較的出番が少ないから、習えばよかったなんて、いつも冗談言っている方もいますよね。
However, on the other hand, there are many cadenzas and other solo passages that you suddenly have to play after not moving or warming up for a half-hour, but you still have to hit the right notes.
でもそういう一方で、カデンツァだのソロのパッセージだのが、たくさん出てくるんですよ。それも30分じっと待っていて、ウォームアップも無しに、いきなりですよ。それでも、音を間違えるわけにはいかないですからね。
Managing that is not very easy, and when such passages come along, they are usually very exposed.
これをなんとか上手くやるのは、簡単には行かないです。この手のパッセージは、大概やたら目立つような状況で演奏することになるんです。
DO
When you end up playing something in the orchestra, is it ...
ダニエル・オッテンザマー
そうやって、合奏中に何か出番があると…
AL
Nice.
アンネレーン・レナエルツ
嬉しいですよ。
DO
OK, so it really is not so little. I see you regularly in the opera, but then, the work you do is very soloistic. The ballets, often by Tchaikovsky, have major cadenzas and transitions.
ダニエル・オッテンザマー
なるほど、実際には、そんなにチョイ役ばかりじゃない、てことですね。国立歌劇場での演奏では、毎回あなたと一緒になるんですよね。でもあの会場で演奏する曲での、あなたの役割というのは、結構ソロっぽいですよね。バレエ、とくにチャイコフスキーなんかですと、有名なカデンツァやつなぎのフレーズが沢山あります。
AL
Yes, in the “Nutcracker,” we sit for a half-hour until the cadenza comes, and then suddenly there is nothing but harp. Then you realize, you have to warm up and perform the cadenza at the same time. There are many such passages.
アンネレーン・レナエルツ
そうなんですよ。「くるみ割り人形」なんかですと、30分じっと待っていて、カデンツァが出てきます。突然ですよ、ハープだけになりますからね。ウォームアップしてカデンツァを弾いて、が同時にくる、というのが、おわかりいただけると思います。そんなパッセージばっかりですよ。
DO
Did you always had an interest in joining an orchestra, which is not always a given among harpists? One can perform on the harp in other settings without being a member of an orchestra.
ダニエル・オッテンザマー
オケで弾きたい、という気持ちは、ずっとあったのですか?ハープ奏者の方達には、そんなに多くないですよね。オケに入っていなくても、ハープは人前で演奏する機会が、他にありますからね。
That is different from the wind instrument players who generally from the beginning want to attain a position in an orchestra. What was that like for you?
管楽器奏者の場合は、全然違って、最初からオケに入りたい、と思うのが一般的です。あなたの場合は、どうでしたか?
AL
That is correct, and is a good question. In fact, at the beginning I did not have the wish to join an orchestra. May I say that?
アンネレーン・レナエルツ
言ってることは当たっているし、良い質問してくれますよね。実際最初は、私も、どうしてもオケに入りたい、とまでは、思っていなかったです。あ、こんなこと言って良かったかなあ?
DO
Yes, that is very interesting.
ダニエル・オッテンザマー
大丈夫、結構興味深い話ですよ。
AL
I had always enjoyed performing as a soloist and in chamber music. Then I took part in the ARD competition and received many invitations from the Bavarian Radio where I worked a lot with Mariss Jansons.
アンネレーン・レナエルツ
ここに入る前は、ソロ活動や室内楽での演奏を、満喫していたんです。それでミュンヘン国際音楽コンクールにでて、そのあとバイエルン放送交響楽団から、沢山お誘いを頂いたんです。そこで、何度もご一緒させていただいたのが、指揮者のマリス・ヤンソンスさんだったのです。
While working there, Xavier de Maistre said that he was leaving the position here.
その頃ですよね、グザヴィエ・ドゥ・メストレさんから、ウィーン・フィルを退団する予定なんだ、と言われたのは。
DO
So he himself actually told you about it?
ダニエル・オッテンザマー
グザヴィエさんが、自分の口から、あなたに実際にそう言ったのですか?
AL
He just told me he was leaving, nothing else. I hadn't previously had anything to do with him and never studied with him. It was by chance I heard of it because I was playing in Munich.
アンネレーン・レナエルツ
彼は退団する予定だ、と言っただけで、他には何も言っていません。彼とは、以前から接点は特になかったですし、彼からハープを習ったこともありません。たまたまミュンヘンで演奏活動をしていた関係で、彼の口から、そのことを耳にしただけです。
I thought to myself that this would be great. I could still be able to do many other things. Just playing as a soloist, I would never encounter the works of Mahler or Strauss. One learns so much. Even how I play now is different because of my experience in the orchestra.
その時、ふと思ったのが、これは凄いチャンスかも、ということです。その頃は、演奏する機会は他に沢山ありましたけれど、ずっとソロ活動だけでは、マーラーやリヒャルト・シュトラウスなんかの作品に取り組むことは、ありません。こういう作品に触れることで、学ぶことはすごく大きいのです。私も、ウィーン・フィルでの演奏経験のおかげで、自分の演奏は、それまでと変わりましたよ。
On the other hand, I can play a cadenza in the Nutcracker better because I am used to performing as a soloist. It is reciprocal and one grows greatly in the orchestra. One learns a lot even when not playing, just by listening and trying to bring the sound and style into one's own playing.
反面、ソロ活動のおかげで、先程の「くるみ割り人形」のカデンツァが、人並み以上に弾けるわけです。どちらもが、お互いにとって良い経験になる、そして、オケに入って弾くことで、大きく成長することになります。自分が弾いていない時も、他の音をよく聴いて、そういった音の響かせ方や、演奏のスタイルなんかを、自分自身の演奏に取り入れてゆこうとするのです。
DO
You mention that you are not only the principal harp, but also perform a lot as a soloist. You emphasize this aspect and have already released several CDs with solo harp.
ダニエル・オッテンザマー
現在は、首席奏者としてだけでなく、ソロ活動も沢山なさっているとのことです。そのことは、普段から強調されていることですし、既にソロのCDも、幾つかリリースなさっています。
How much of the original repertoire for harp and orchestra do you perform and to what extent are arrangements important for your instrument?
元々、ハープのために作られた作品は、どのくらい普段演奏なさっていて、それから、他の曲をハープ用にアレンジしたものを演奏することの重要性について、教えて下さい。
AL
That is another difficult question.
アンネレーン・レナエルツ
なんか、難しいことばっかり訊くのね。
DO
Only difficult questions today!
ダニエル・オッテンザマー
今日は、難しいことしか訊かないよ!
AL
No, it is just that I like to play arrangements. Last week I played the Chaconne by Bach on the harp, and it is obvious that it is not about competing with the violin.
アンネレーン・レナエルツ
重要とか、そういうのじゃなくて、単にアレンジした譜面を弾くのが、好きなだけですよ。先週はバッハの「シャコンヌ」を、ハープで演奏しました。勿論、バイオリンと比べるとか、そういうことでは全然ありません。
It has to do with the music, and not with the instrument. There is so much great music and we should just play great music. If I have the chance to play the Chaconne or an arrangement of Liszt or Chopin, I learn something from it, and try to produce that what the composer intended.
大事なのは、音楽そのものであって、何の楽器でやるか、ではないのです。優れた作品というのは、沢山ありますし、そういう作品は、とにかく自分で演奏してみるべきだと思います。シャコンヌにしても、リストやショパンの曲をアレンジたものにしても、それを自分で弾いてみる機会を持てれば、学ぶことがありますし、そうやって、作曲家が意図するものを、自分で音にしてみようとするわけです。
It is not supposed to be in competition with the original instrument. A good example is the Arpeggione Sonata by Schubert, which is no longer played on the arpeggione but on every other conceivable instrument, a practice that nobody questions. It is just great music, regardless of which instrument playes it.
こういう取り組みは、原曲の楽器に負けない演奏をするとか、そういう意図でやっているわけではありません。シューベルトの「アルペジオーネ・ソナタ」イ短調、これなんかは良い例です。今では元々の6弦ギターで弾くことはありません。これなら行けるだろう、という楽器なら、何でも使われています。誰も疑問を感じる人はいませんよね。この曲は、音楽自体が素晴らしいから、何の楽器で演奏しても関係ない、ということです。
DO
So one should not set limits on the instrument.
ダニエル・オッテンザマー
この楽器は、この曲しか演奏してはいけないとか、そういう風に制限しないほうが良い、ということでしょうか。
AL
Exactly, I agree. Of course, there are pieces that perhaps don't work too well, and in that case it is not a good idea. But there are truly many opportunities, for sure.
アンネレーン・レナエルツ
全くその通りです。勿論中には、しっくりこない作品もあるかもしれません。それは、浮かんだアイデアが良くなかった、ということです。でもやってみたら良かった、ということが、沢山あるのは、間違いありません。
DO
To what extent can one play piano music as it stands on the harp?
ダニエル・オッテンザマー
ピアノのために書かれた作品は、ハープではどこまで演れるものなんですか?
AL
Pretty completely. It depends. We have seven pedals for each pitch class.
アンネレーン・レナエルツ
結構いけますよ。曲によりますけどね。ハープには、調性を変えられるペダルが7つありますから。
DO
I have noticed that there is a lot of footwork involved.
ダニエル・オッテンザマー
足の操作が、結構ありますよね。
AL
You actually need good abdominal muscles.
アンネレーン・レナエルツ
腹筋がしっかりしていないと、ダメなんです。
DO
Yes, because you are lifting your feet up all the time.
ダニエル・オッテンザマー
ですよね、ずっと足を、上げ下げしっぱなしですもんね。
AL
Yes, exactly, and otherwise the upper body should remain still. However, it gets difficult in chromatic passages. We have many possibilities because there are three options in the pedal for each pitch. That enables enharmonic solutions.
アンネレーン・レナエルツ
本当にそうです。でないと、上半身が安定しません。ただ、ピアノ曲を演奏する時は、半音階のパッセージは大変です。やりようは、沢山あります。どの調性を弾くにしても、3つオプションがあるからです。そのおかげで、「ラの♯か、シの♭か」という問題も、なんとかなるわけです。
That is something that it is good not to tell the composers because it makes them nervous. Still, there are many options, even though it can be complicated. You have to approach it positively.
こういうことは、作曲家の人達には言わないようにしています。面倒くさいな、と思われてしまいますからね。とにかく、やりようは、沢山あります。弾き方は面倒くさくなりますけどね。そこは、前向きに気持ちを持って、取り組まないといけません。
DO
So there are a lot of possibilities. I am aware that you have a wonderful festival in Belgium, in Ghent. I was there as a guest.
ダニエル・オッテンザマー
ハープでの演奏には、やりようが沢山あるということですね。あなたの母国ベルギーのヘントでは、素晴らしい音楽祭が開催されています。僕もゲストで呼ばれて参加したことがあります。
AL
Yes, and you did a moderation as guest.
アンネレーン・レナエルツ
知っています。ゲストの立場で、司会をしてくれましたよね。
DO
I also moderated?
ダニエル・オッテンザマー
そうだったっけ?
AL
Yes!
アンネレーン・レナエルツ
そうよ。
DO
Maybe that was when I laid the groundwork for this interview series.
ダニエル・オッテンザマー
多分、このインタビューシリーズを担当することになった、てことで、経験しておこうと思ったのかな。
AL
Yes, that is something that I don't like to do, but you are great at it.
アンネレーン・レナエルツ
そうそう。私は、あまりやりたくなくて、でもあなたは、本当に上手だから。
DO
You do it just as well and it is very pleasant to speak with you here. Anyway, I was with my ensemble, Philharmonix, at your festival and we played together there. What is your focus for the festival? Are you the artistic director who decides what happens? What is your policy?
ダニエル・オッテンザマー
君だって、僕ぐらいには上手くやれるよ。今ここで喋っていても、とっても気分良くやれているからね。ま、それはともかく、僕は自分の「フィルハーモニクス」というアンサンブルで、先程お話した音楽祭には、出させて頂いたんです。その時、あなたと一緒に演奏しました。あの音楽祭で、あなたが特に取り組んでいることは何ですか?あなたは芸術監督をされていると思うのですが、どのような方針をお持ちですか?
AL
Yes, there is an arts center and concert hall. I was repeatedly asked if I could be the curator of a small festival.
アンネレーン・レナエルツ
そうなんですよ。ヘントには、芸術家が活動拠点にできる施設だとか、コンサートホールなんかがあるのです。コンパクトな形の音楽祭をやるので、音楽面での取りまとめ役をしてくれないか、というのは、何度も依頼を受けていました。
DO
To organize the festival?
ダニエル・オッテンザマー
音楽祭の取りまとめ役、ですか?
AL
Yes, to organize it. I thought from the beginning that the focus should be on Vienna. That's why your ensemble played there.
アンネレーン・レナエルツ
そう、取りまとめ役です。当初から、ウィーンにポイントを持っていこうとは、思っていました。あなたのアンサンブルに演奏をお願いしたのは、そのためです。
There are so many great options because Vienna has such a fantastic musical history. And my connection to it was obvious. Soon we will expand toward doing a journey around Europe, perhaps a trip from Vienna to Prague.
これをやったら良いかな、という選択肢は沢山あって、どれもこれも素晴らしいものばかりです。それだけウィーンには、多種多彩な音楽の歴史があるからです。そこと私の結びつきは、ハッキリしています。いずれはヨーロッパ全体に視野を広げていくことになるでしょう。ウィーンに続いては、プラハかな。
DO
That would be a new focus?
ダニエル・オッテンザマー
新たな取り組みですね?
AL
The focus might change, but the link to myself would remain. There is a lot of musical history to tell.
アンネレーン・レナエルツ
取り組みは色々変わっても、私自身との結びつきは、維持されてゆくと思います。音楽のこれまでの歩みには、語り伝えるものが沢山あるのです。
DO
Was the festival interrupted because of Corona?
ダニエル・オッテンザマー
この音楽祭は、コロナ禍で中止になってしまったんですよね?
AL
It took place at the end of January. I hope that by next January things will be good again. Fortunately, it is possible to play in smaller venues. So we can be flexible.
アンネレーン・レナエルツ
1月の終わりでしたね。来年の1月には、状況が良くなってくれたらいいと思っています。幸いこの音楽祭は、比較的小さな施設で演奏が実施できるので、いくらでも方法はあります。
DO
Good. What are your future project? Do you have anything in particular planned? We already mentioned your CDs. Is there something in particular that you are looking forward to recording?
ダニエル・オッテンザマー
いいですね。さて、今後の取り組みについて、教えて下さい。何か計画はありますか?CDのことはうかがいました。レコーディングしてみたいことは、特に何かありますか?
AL
Yes, the good thing about this Corona crisis is that we have all had more time to devote to other things for which we usually don't have time. I like to make arrangements and, in addition, I compose a little bit.
アンネレーン・レナエルツ
あります。今回のコロナ禍で、普段あまり時間を割けないことに、しっかりと取り組めたことは、良かったと思います。普段好きで編曲はしていますし、今回これに加えて、自分でチョットだけ曲を作ってみたんです。
DO
You compose?
ダニエル・オッテンザマー
作曲ですか?
AL
Yes, but there is never enough time for that. The next CD will reflect my work with operas and symphonies. I have a dream of making an arrangement of Liszt's Les Preludes for harp and that is now completed.
アンネレーン・レナエルツ
そうです。でも十分に時間が取れなくて。次に出すCDには、オペラや管弦楽曲に絡んだ、自分の書いた譜面を採り上げようと思っています。リストの「レ・プレリュード」をハープでやってみたい、とはずっと思っていて、今回楽譜が完成したんです。
DO
Wow!
ダニエル・オッテンザマー
それはすごい!
AL
Yes! during the quarantine. It is for the next CD project in January.
アンネレーン・レナエルツ
でしょ?!この隔離期間中にね。1月に作る次のCDに入れる予定なんです。
DO
Is that already planned?
ダニエル・オッテンザマー
もう計画済みなんですか?
AL
Yes, now I have to learn how to play it!
アンネレーン・レナエルツ
ええ、なので、練習しなきゃ、です!
DO
So we can all look forward to that. It will be very exciting to hear that on the harp. Even though, regrettably, I was not involved and did not hear it, you recently had the opportunity to perform with our orchestra during the Mozart Festival. It was Mozart's “Concerto for Flute and Harp.” Can you briefly describe what it was like to perform before the orchestra with your own colleagues?
ダニエル・オッテンザマー
それは楽しみです。ハープで「レ・プレリュード」ですか、凄いだろうな。ところで、あなたはザルツブルク音楽祭期間中、モーツアルトの「フルートとハープのための協奏曲」を演奏する機会がありましたよね。残念ながら僕は降り番だったので、聞けなかったんですが、同僚のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団を伴奏にした演奏、どんな感じでしたか?
AL
That was very special, of course. I have played Mozart very often. The first time was, this might seem somewhat bizarre, in the Large Festival Hall with the Mozarteum Orchestra when I was 16.
アンネレーン・レナエルツ
あれはもう、特別です。モーツアルトの協奏曲は、何度も演奏したことはありますよ。最初に演奏したのは、これは分不相応だったかもしれませんが、16歳の時に、ザルツブルク・モーツアルテウム管弦楽団に伴奏をシていただいて、会場は、ザルツブルク祝祭大劇場でした。
At that time, I didn't really understand everything that was going on. So several years later, to be able to play a solo with my own orchestra was a very different experience.
当時は、ことの全てを把握することは、出来ませんでしたけれど、その数年後に、自分が主催するオーケストラと、この曲を演奏した時は、ザルツブルクの時とは全然違う体験ができました。
I am used to playing solos, but generally I am part of this orchestra. Suddenly...
ソロの演奏には、慣れはあります。ですが普段は私はウィーン・フィルの一団員ですので、今回は突然…
DO1212
You were up front as a soloist.
ダニエル・オッテンザマー
突然、一番前で独奏者、ですからね。
AL
Exactly. You do have the feeling that your colleagues are observing you more that usual.
アンネレーン・レナエルツ
全くその通りです。同僚達の視線が、普段よりじっと集まってくるのが、しっかり感じ取れますよ。
DO
The atmosphere must have been very special.
ダニエル・オッテンザマー
普段とは全く違う空気感だったんでしょうね。
AL
You can feel it behind you. You really do sense the great support of everybody. It was very special and truly a wonderful moment.
アンネレーン・レナエルツ
背中に感じますよ。一人一人が、ガッシリと支えてくれているって。本当に特別で、本当に素晴らしい、そんな一時でした。
DO
Perhaps in closing you can name one composition, as you mentioned, in which the harp has so little to play.
ダニエル・オッテンザマー
締めくくりに、ハープがほとんど出番のない曲を、1曲挙げてみてください。
AL
I shouldn't have mentioned that.
アンネレーン・レナエルツ
30分待つとか、言わなきゃ良かったかしら。
DO
You shouldn't have mentioned it? Now it could become an idea that creates the wrong impression. In fact, the harp plays constantly in many of the operas.
ダニエル・オッテンザマー
そうですか?もしかしたら、間違えた印象を与えてしまっているかもしれませんね。実際のところは、オペラ作品では、ハープは出番が多いですよね。
Can you remember a particular composition from your first season that stuck in your mind? Or a composer who wrote a particular solo for the harp?
ウィーン・フィル入団当初から取り組んだ曲で、特に印象に残っている曲、あるいは、印象に残っているハープのソロを書いた作曲家を、教えて下さい。
AL
Maybe not exactly a solo, but before I came to Vienna, I had never played opera. I remember particularly learning the rich repertoire of Richard Strauss. In “Ariadne auf Naxos” and “Salome” there is wonderful writing for the harp.
アンネレーン・レナエルツ
正確には、ソロではありませんが、とにかく私は、ウィーンに来る前は、オペラ作品は演奏したことがなかったので、特に学びが大きかったのは、リヒャルト・シュトラウスの作品ですね。「ナクソスのアリアドネー」と「サロメ」には、ハープの素晴らしい箇所があります。
It is not always featured prominently, but is very challenging. If today you were to tell a composer to write something like that, he might say, “That's not possible. It is too difficult and complex.”
いつも目立つように書かれているわけではありませんが、結構難しい譜面です。現代の作曲家に、こんな感じの曲を書いてくれと頼んだら、「無理だね、難しすぎるし、複雑極まりない。」と言われてしまうかも。
“Rosenkavalier” also contains such unbelievable music. So I learned much and I actually miss playing that music. I hope that we can soon return to our regular routine.
「バラの騎士」も、本当にこんな譜面が書けるのかしら、というものが詰まっています。沢山勉強になりましたし、また演奏してみたいです。早く普段どりの活動ができるようになって欲しいですよね。
DO
I hope so, too.
ダニエル・オッテンザマー
僕もそう願っています。
AL
Richard Strauss is truly remarkable.
アンネレーン・レナエルツ
リヒャルト・シュトラウスは、本当に非凡な作曲家です。
DO
It is true that the harp is fully integrated into the orchestral texture. I am sure it is very challenging, but also quite rewarding to not only play the cadenzas, but then also to be incorporated into the sound of the orchestra.
ダニエル・オッテンザマー
ハープがオーケストラ全体の中で、しっかり機能を発揮できるように、曲が作られています。きっと物凄く難しいのでしょうが、目立つカデンツァを弾くだけでなく、オーケストラ全体の中でサウンドの一部となってゆくことも、演奏の醍醐味、ということでしょう。
That is a good thought in closing. Anneleen, thank you for coming today.
今日の締めくくりに、良いお話を聞けました。アンネレーンさん、今日は有難うございました。
Thank you also for watching and until next time on IDAGIO Live.
アイダージョ・ライブ、ご覧頂きまして、ありがとうございました。次回もお楽しみに。